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    sangurai3

    かなり前に成人済。ダイ大熱突然再燃。ポップが好き。
    CPもの、健全、明暗、軽重、何でもありのためご注意ください。
    妄想メモ投げ捨てアカウントのつもりが割と完成品が増えてきました。

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    POIPOI 64

    sangurai3

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    ぽぷまつり連動企画投稿作品。12月のお題「子ども」をテーマにしたポプマです。レオナの方がマァムより喋ってるかも。本編後、付き合っているのか、いないのか?細かいことは気にせずお楽しみいただければ幸い。

    どんな君でも 神々が作り給うたこの世界では、言葉では説明できないような不思議なことがたびたび起こる。大魔王との大戦においては、人・魔・竜の力を持つ騎士、弱き者の無垢なる願いを叶える存在など人智の及ばぬ奇跡によって地上は幾度となく救われてきた。
     人間にとって比較的近しい『不思議』である魔術や法術についても、その全てが明らかにされているわけではない。技術が発展した現代では既に扱える者のいない失われた呪文ロスト・スペルの方が多いくらいだ。賢者の国パプニカや秘法の守護国カールなどで古代の魔導書解析が熱心に行われてはいるが、その道のりは険しく長い。この世の全ての謎を解き明かせる日は来るのは遠い遠い未来のことになるだろう。
     そう、この世界にはまだまだ多くの不思議が溢れているのだ。

    「そんな訳でマァムが子どもになっちゃったわ!」
    「説明が雑すぎんだろ!」
     勢いよくツッコミを入れ、ポップは深い溜息をつく。近々正式にパプニカ女王となる予定のレオナと二代目大魔道士を名乗るポップの目の前には、桃色の髪をした小さな女の子がいた。布張りの椅子にちょこんと腰掛け、大きな瞳でレオナとポップを見上げている。
    「魔導書を書庫から執務室に何冊か持って来てたのよ。あたしもアポロも一通り目は通していて、罠の本トラップブックでも無さそうだったからじっくり解析しようって話になってて。で、訪ねてきたマァムが本を開いたら突然」
    「子どもになっちまったって訳かい」
     説明を共に聞いていたマァムは、レオナとポップに向かってひょこりと頭を下げる。
    「めいわくかけてごめんなさい」
    「やだ! あなたが謝ることじゃないわ。中を見てもいいわよって言ったのはあたしだもの」
     レオナは慌ててマァムの頭を上げさせる。見たところ十歳は幼くなっているが、既に自分の状況を冷静に受け止めているようだ。
    (ガキの頃からしっかりしてんだなあ、こいつ)
     泣きべそをかいてばかりだった自身の幼少期を思い出し、ポップは感心したようにマァムを見つめる。
    「で? おれに魔導書の解析をしろってのかい?」
     呼び出された理由を改めて問うと、レオナは首を横に振った。
    「それはこちらでやるわ。何故突然、マァムが本を開いた時だけ発動したのかも調べたいしね。キミにやって欲しいのは――」
     レオナは言葉を切り、ぱちんとウィンクをしてみせる。
    「小さなレディのお話し相手♪」
    「はあ?」
     首を傾げるポップに「光栄に思いなさいよぉ?」とレオナは笑う。
    「私もアポロたちもこれから予定が山積みなの。本当はマァムと一緒にお茶をして、その後は適当にくつろいでもらうはずだったんだけど……今のこの子を一人にしておく訳にはいかないでしょう?」
    「そりゃまあ、そうだろうけどよ」
     マァムもポップもレオナの友人として王城にはしょっちゅう訪れている。執務や会議や多忙なレオナに少々放っておかれても困るようなことなどほとんど無い。しかし今のマァムは記憶まで十年前に遡っているらしい。何も知らない彼女を放置することはできない、というレオナの言葉はよく理解できた。
    「でも、おれのことだって覚えてねえんだろ? 見ず知らずの男より、城のメイドさんとか女の子同士の方がいいんじゃねえの?」
    「もしまたマァムに変化が起こったらどうするのよ。うちの使用人は皆優秀だけど、魔法による状態異常の対処まではできないわ」
     それはそうだとポップは一応納得する。しかし幼いマァムにしてみれば、初対面の男性と見知らぬ場所で過ごさねばならないのはやはり不安ではないだろうか。静かに座ったままの少女にポップはできるだけ穏やかに問いかけてみる。
    「え〜と、そんな訳でさ。しばらくおれと一緒にいて欲しいんだけど……いいかな?」
     マァムはこくんと頷き、ポップに向かって再び頭を下げる。
    「よろしくおねがいします」
     聞き分けの良すぎる少女に戸惑いつつも、ポップは「んじゃ、よろしくな」と精一杯の明るい笑顔を返した。

     ポップにマァムを任せたレオナは慌ただしく執務室を出ていく。
    「ここじゃ退屈だろうから外に出て遊んでもいいわよ。あまり遠くには行かないでね」
     そう言い残してバタバタと扉の向こうへ去るレオナに手を振り、ポップは「さて」とマァムに問いかける。
    「どうする? 姫さんが言ってたみてえに外にでも行くか?」
     マァムは俯いて考え込む様子を見せた。そしてしばしののち、ポップに問いを返す。
    「いつものわたしはお城で何してたんですか?」
    「いつも? う〜ん……」
     ポップもマァムもパプニカ城には大戦の頃からしょっちゅう訪れているため、改めて普段どう過ごしているかと問われると少々戸惑う。
    「いつものマァムなら……庭を散歩してみたり、訓練場に足伸ばして兵士と手合わせしてたり。たまに図書室にも行ってたかなあ」
    「そう……」
     何とか思い出しつつ答えたポップに、幼いマァムはただ頷いた。どの行動も今の彼女にはあまり魅力的には思えないようだ。
    「別に同じことしなくってもいいんだぜ? 行きてえトコとかやってみてえことがあるなら、おれが付き合ってやるからよ」
     レオナ直々に相手を頼まれたのだ。任せとけ! と胸を張るポップに対し、しかし幼いマァムは複雑そうな表情を見せる。
    「でも、本当のわたしは大人なんでしょう?」
    「え? まあ、そう言われりゃそうだけど……」
     マァムの言葉の真意が読めず、ポップは首を傾げる。まだ十歳にも満たぬ年頃の少女はきりりと真剣な目つきになる。
    「本当は大人なんだったら、今のわたしもちゃんとしてなきゃいけないでしょ?」
     予想外の言葉にポップは唖然とする。目の前の少女は椅子の上でぴしりと座り直し、ポップを真っ直ぐ見つめてきた。
    「めいわくかけちゃだめだもの」
     大きな栗色の瞳には、いつものマァムと変わらぬ輝きが宿っている。しかしその奥に潜む小さな陰りに気づき、ポップは眉をしかめた。
    「……おめえに迷惑かけられてるなんて、誰も思っちゃいねえぜ?」
     椅子の前にしゃがんで目線を合わせ、マァムに語りかける。ポップの言葉に少女は不安そうに大きな瞳を揺らす。
    「でも、お姫さまもけんじゃさんも困った顔してたわ」
    「それはマァムのせいじゃねえよ」
     ポップはぽん、とマァムの頭に手を乗せた。拒む様子が無いのにこっそり安堵の息を吐き、弾ませるように桃色の髪を撫でる。マァムは安心したように目を細めた。当初より少し心を開いてくれているようだ。ポップはできる限り優しい笑みを向ける。
    「姫さんは率直な人だからな。マァムが悪いことしたならちゃんと叱るよ。何にも言われなかったってことは、おめえは何にも悪くない、迷惑なんてかけてないってことさ」
    「そう、かな……」
     真面目な姉弟子は幼い頃から真面目だったようだ。「そうさ」と言い切り、ポップはマァムの髪をくしゃくしゃとかき混ぜた。
    「あ、やだあ」
     ぱっと頭を抑えるマァムに「悪りい、悪りい」と謝る。髪を整え直してやりながらニイと笑いかけると、マァムも困ったような顔で笑い返してくれる。
    「真面目なのはおめえのいいとこだと思うけどさ。もっと我が儘言ったっていいんだぜ。誰も迷惑になんて思わねえし、嫌いになんて絶対ならないんだから」
    「そうかなあ」
    「そうそう。このおれ様を信じなさいって」
     わざとふざけた調子で言えば、マァムはふわりと笑う。赤の他人に対するような固い口調と態度が崩れてきたことがポップには嬉しい。
    「んで? 何かやってみてえこととかあるか?」
     改めて問うも、マァムはやはり難しい顔をする。
    「んん……何がしたいか、よくわかんない」
    「そっか」
     ポップは立ち上がり、執務室の窓に向かった。両開きのそれを大きく開け放つ。爽やかな風が部屋を吹き抜け、マァムは心地良さそうに頬を緩めた。
    「じゃ、おれのやりたいことに付き合ってくれるかな」
     ポップの誘いに少女はこくんと頷く。椅子から下りると、すたすたとポップに歩み寄る。
    「お兄ちゃんは」
    「おっと。ポップって呼んでくれよ。『お兄ちゃん』て呼ばれるのあんま好きじゃねえんだ」
    「ん……ポップは、何がしたいの?」
     問いかけにポップはにんまりと笑う。きょとんとした顔のマァムを抱え上げ、窓の外を指差す。
    「とりあえず、外!」
     言うなりふわりと浮き上がる。マァムは「きゃあ!」と叫び声をあげた。
    「しっかり掴まっとけよ!」
     窓から飛び出した二人の身体はあっという間に城を見下ろせる位置にあった。目を白黒させているマァムにポップは笑顔で問いかける。
    「トベルーラっていう魔法だよ。怖えか?」
     ひしと抱きついたまま、マァムは首を横に振った。
    「すごい! ちょっとだけびっくりしたけど、ふわってなるの楽しかった!」
    「おお〜いいねえ。じゃ、もうちょい遊んでみるかぁ」
     ポップはマァムを抱きしめた状態で上へ下へと飛び回る。空中で一回転してみるとマァムはきゃあきゃあと笑う。元より人並み外れた身体能力を持つ彼女だ。幼いうちから度胸も座っている。
    「ね、ポップ! あっちに見えるのってもしかして海⁉」
     マァムが東を指して問うてくる。真っ青な海原が穏やかな陽に照らされてキラキラと輝いている。
    「ああ、あれが海だよ。あの小っこく見えるのが船」
    「すごいすごぉい! はじめて見た!」
     きゃっきゃとはしゃぐ姿を見て、ポップは出会って間もない頃のマァムのことを思い出す。ロモスから船でパプニカに向かう際、海を見たマァムは生まれて初めての景色に目を丸くしていた。だがここまで興奮した様子ではなかった。
    (あの時、本当はもっとはしゃぎたかったのかもな)
     魔王軍との戦いのさなか、騒ぐ心境ではなかったかもしれない。それに加えてアバンの使徒としてポップたちの姉弟子としてしっかりしなければという気負いもあったのだろう。ネイル村でも守り手として常に気を張っていたマァム。きっと幼い頃から『ちゃんとしてなきゃ』という意識が強かったのだろう。思ってたより無理してたのかもな、とポップは記憶の中のマァムを想った。
    「ポップ? どうしたの?」
     腕の中のマァムに声をかけられ、慌ててポップは笑顔を向ける。
    「わりわり。ちょっとぼーっとしてた」
    「だめねえ。まほう使ってるときは集中しなきゃ」
     大人のような口ぶりでポップを諌めてくる。レイラの真似をしているのだろうか。
    「あいあい! 気をつけやす!」
     そうポップが言うとマァムは「よろしい!」と笑う。小生意気な表情が愛らしい。ニッと笑い返し、ポップは港とは逆方向を指差す。
    「西向きに海の上をずーっと飛んでったら、ネイル村に着くぜ。行ってみるか?」
     故郷で母親や見知った人たちに会えば気持ちも安らぐだろう。そう思ったポップはマァムに提案してみる。だが大きな瞳を輝かせて海を見つめていた少女は途端に戸惑いの表情を見せた。
    「おうちに帰るの……?」
    「……ん? 何だよ、嫌か?」
     予想外の表情を見て、ポップは慎重に問いかける。
    「だって、今のわたし、本当は大人なんでしょう?」
    「子どものマァムは村に帰っちゃいけねえのかよ」
     執務室にいた時と同じ言葉を繰り返すマァムにポップは問いを重ねた。マァムは眉を下げ、不安そうにポップを見上げてくる。
    「子どものわたしが帰ったら、母さん困らない? ……めいわくじゃ、ない?」
    「! そんなこと、絶対あるもんか!」
     ポップはマァムを強く抱きしめる。震える小さな身体を腕の中に包み込む。
    「びっくりはするかもしれねえけど、困るなんてありえねえよ。マァムの母ちゃんは、おめえに『迷惑だ』なんて言う人か?」
    「ちがう」
     マァムはふるふると首を横に振る。
    「めいわくなんて言わないとおもう……けど、わたし母さんを困らせたくないの。うちは父さんがいないから、わたしは父さんのぶんまでがんばらなくちゃだめなの」
    「……そっか……」
     物心がつく頃からずっと周囲に言われてきたのだろう。『お母さんを大事にね』『お父さんのぶんまで助けてあげてね』と。声をかけた者にも悪気は無いのだろうが、マァムは幼い頃から大人が考える以上に重い責任を感じていたのかもしれない。
     ポップはぐしゃぐしゃと桃色の髪を撫でた。「あ、また! もう!」マァムは唇を尖らせる。空中でポップにしがみついている状態なので乱れた髪を自力で直せない。ぷうとふくれっ面になったマァムをポップは優しく見つめる。
    「マァムは偉えな。でもな、マァムの母ちゃんはおめえが急に小っこくなったって、父ちゃんの代わりができなくたって、迷惑に思ったりしねえ。顔見せたらすげえ喜ぶと思うぜ」
    「ほんと?」
    「当然」
     柔らかい髪を漉き、跳ねた部分を直してやる。元々ポップが乱したのだが、マァムは「ありがと」とくすぐったそうに笑う。
    「だってマァムの母ちゃんはマァムのことが大好きなんだから。どんなマァムだって大歓迎してくれるに決まってるさ。おれが保証する」
     小さくなってしまった姉弟子を真っ直ぐ見つめ、ポップは断言する。マァムはぱたぱたと瞬きをして、「そうかな」と呟いた。
    「マァムだって、母ちゃんのこと大好きだろ?」
    「うんっ! 大好き!」
     こくこくと頷くマァムに笑いかけ、ポップはぐんと高度を上げる。
    「そんならやっぱり会いに行かなくちゃな! さ、思いきり飛ばすぞお!」
     魔法力を高め、ラインリバー大陸を目指してポップは高速で飛ぶ。腕の中のマァムは怖がりもせず、「鳥さんより速い!」と興奮している。青い空と海の間に光の軌跡を描きながら、ポップは大声で叫んだ。
    「おれも、どんなマァムだって大好きだからな!」
     胸元にぎゅっとしがみついてきたマァムが楽しそうに応える。
    「わたしも! わたしもポップ大好き!」
    「! よおっしゃあ! スピードアーップ」
    「きゃああああ! はやーい!」
     風にも勝る速度でポップは空を翔ける。強大な魔法力で守られているのを理解しているのか、マァムは安心しきった表情で飛行を楽しんでいる。二人は大騒ぎしながらマァムの故郷を目指した。

    「で、夕食までご馳走になってきたって訳ね」
     空に星が煌めく夜更け。溜息をついて、レオナはポップを見つめる。ポップは悪びれもせず「しょうがねえじゃん」と笑った。
    「顔見せたら帰ってこようとは思ってたんだぜ? けど、レイラさんに引き止められちまったからさあ」
    「そもそも、あたし『遠くには行かないで』って言ったわよね?」
     王女の鋭い睨みもポップには通じない。
    「おれの基準だと『遠い』は『地上以外の世界』だから」
     しれっと応える二代目大魔道士に二度目の溜息をつき、「まあ、いいわ」とレオナはそれ以上の追求を諦めた。
    「マァムもお城でじっとしてるより楽しかっただろうし……ふふ、よく寝てる」
     二人の目の前では小さなマァムがくうくうと寝息を立てている。夕食を食べ寝落ちしてしまったところでポップがルーラでパプニカに連れ戻ったのだ。
    「こいつ母ちゃんの顔見た途端わあわあ泣き出しちゃってさ。おれらが思ってた以上に気ぃ張ってたんだろうなあ」
    「そう……それはそうよね」
     レオナはマァムが子どもになってしまった直後のことを思い返す。見知らぬ人に囲まれて驚きもせず、「ここどこですか?」と冷静に尋ねてきた幼い少女。きっとあの時も泣きたいのを必死で堪えていたのだろう。
    「で、落ち着いたらレイラさんにべったりだわ、遊びに来たミーナと『今はあたしがお姉さん』『ほんとはわたしがお姉さん』って言い争い始めるわ。面白かったぜえ〜」
     レオナの胸中を知ってか知らずか、ポップは愉快そうにネイル村でのマァムの様子を語る。少女の無邪気な姿がありありと目に浮かび、レオナの表情も和らいだ。
    「で? 肝心の魔導書については何か分かったのかよ?」
     どれだけ楽しく時を過ごしていても現在のマァムは状態異常だ。解呪方法は分かったのかと問うポップにレオナは頷きを返す。
    「解析してみたら、やっぱり文章に仕掛けがあったの。トラップというより悪戯本トリックブックって感じですけどね」
    「悪戯?」
    「魔法力を持たない者や特定の呪文を会得してない者が開くと罠が作動する仕組み。条件となる呪文自体は初歩的なものがほとんどなんだけど、その範囲が幅広くて……」
    「はあん。マァムは攻撃呪文で引っ掛かっちまったってわけか」
    「そうみたい」
     それならばレオナたち賢者に何も起こらなかったのも納得できる。変な書を作る奴もいるもんだな、とポップは感心と呆れが混じった声で呟く。
    「あくまで一時的な仕掛けらしくて、効果は長くて一日。年齢逆行以外にも、老化や動物変化の罠なんかもあるようね」
    「へえ〜。ちょっと試してみたくなるなあ。ヒュンケルにでも読ませてみるか?」
    「やだ、ポップ君たら……気が合うじゃない」
     数多の呪文を習得している賢者と大魔道士はキヒヒヒ、といやらしく笑い合う。遠い場所で兄弟子が盛大なくしゃみをしていたが、悪巧みに夢中の二人の耳に届くことは無かった。
    「ということで、マァムも明日には元に戻ると思うわ」
    「そりゃ良かった」
     微笑むポップに、ふうん、とレオナはいたずらな視線を向ける。
    「ホントはもう少しこのままでもいいって思ってたんじゃないのぉ? ずいぶん懐かれたようじゃない」
     城に戻ってきた時、マァムは寝入った状態でもポップにしっかりとしがみついていた。幼子をベッドに寝かせるポップの表情も普段より優しくて、深い愛情を感じさせるものだった。
    「そりゃ、このまんまも可愛いけどよ」
     レオナの想像以上に素直な言葉がポップの口から発せられる。目を丸くする王女に構わず、ポップは温かな視線を眠るマァムに向ける。
    「おれを駄目な弟扱いするこいつも……好きだからさ。小っちぇえマァムに会えなくなるのはちっと寂しいけど、早くいつものマァムに会いてえなって思うよ」
    「あらあら、ごちそうさま」
     とろけるような笑顔でマァムを見守るポップにレオナは本日三回目の溜息をつく。
    「元に戻ったマァムもせいぜい甘やかしてあげなさいな」
    「言われなくてもそうするよ」
     元の年齢に戻ったマァムは、迷惑をかけたとポップやレオナに平謝りするかもしれない。その時は今日伝えたことを再び大きな声で行ってやるのだ、とポップは心に決める。
     大人でも子どもでも、どんな姿になったとしても。困りごとを持ち込まれても、『真面目ないい子』でなくたって。マァムのことが大好きだから、どんなお前のことも見ていたいのだと。必ず彼女に伝えよう。
     そしたらこいつ、どんな顔するんだろうな。真っ赤な顔で固まる想い人を想像してポップはにやける。だらしない笑顔を眺め、レオナは四度目の溜息をつき、愛されてるわね、と眠るマァムに囁きかけた。
     
     神々が作り給うたこの世界では、言葉では説明できないような不思議なことがたびたび起こる。不思議は人に今まで見えなかったものも見せ、聞こえなかった声を聞かせる。
     どれほど知識を蓄え力を身に着けようとも、この世の全ての謎を解き明かせる日など容易に訪れはしない。
    「そんな訳で今度はポップ君が子どもになっちゃったわ!」
    「うええええぇん! ここ、どこおおぉ〜〜⁉ かあさあああぁん!」
    (泣きすぎ! ……でも、こんなポップもちょっと可愛いかも……)

     そう、この世界にはまだまだ多くの不思議が溢れているのだ。
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