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    sangurai3

    かなり前に成人済。ダイ大熱突然再燃。ポップが好き。
    CPもの、健全、明暗、軽重、何でもありのためご注意ください。
    妄想メモ投げ捨てアカウントのつもりが割と完成品が増えてきました。

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    sangurai3

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    ぽぷまつり連動企画投稿作品。2月のお題「おそろい」をテーマにしたポプマです。
    本編後かな?答えは出てるのにこじらせすぎて片思いみたいになっちゃってるマァム視点。
    ほつれた気持ちもきっともうすぐまとまります。

    ほつれる心は恋に揺れ 別に大した理由はない。ずっと使っていた髪紐が傷んできたというだけのことだ。たまたま立ち寄った道具屋には装身具の取り扱いがあった。ちょうど良い機会だと予備も含めて数本の髪紐を購入した。今日身に着けているのはその中の一つ。敢えて選んだ訳でもなく、適当に手にしたのがこの色だったというだけなのだ。
    「お客様の髪色ならこちらのお色なども映えると思いますよ」
     紺や濃い紫の髪紐を指差して店主は優しく笑った。マァムも店主が勧めるものの方が自分の髪色には合っている気がした。この手の中にある色ならば、己の薄桃色の髪よりもっと落ち着いた、そう例えば豊かな黒髪などの方が、よっぽど――
    「これが、いいんです。この色が」
     紺や紫が嫌だったのではない。手にしていたものを棚に戻したくなかったのだ。「左様ですか」と店主は頷き、「そちらもきっとよくお似合いになりますよ」と微笑んだ。後になって、強情を張らず勧められた色も買えば良かったのかもと思い至る。品物を包んでもらっている間、マァムの頬は何故かどんどん熱くなっていった。
    「あれ、いつもの髪紐と違うなあ」
     顔を合わせるなりそう言われて、マァムの眉間に少し皺が寄る。気づかれたのが嫌だった訳ではない。何となく、自分から言い出せなかったのが悔しかったのだ。
    「ずっと使ってたものが駄目になっちゃったから、買い直したの」
     そう返すとポップは「ふうん」とマァムの髪をじっくりと眺め始めた。
    「ちょっと、そんなにじろじろ見ないでよ」
    「悪りい、悪りい。いや、何かさあ」
     今日のポップはやけに機嫌が良い。特殊なアイテムでも高級品でもないマァムの髪紐を見つめ、嬉しそうに口角を上げる。
    「物は全然違うんだけど、お揃いみてえだなって思っちまってよ」
     これと、とポップは顔の横に流れる布を指差した。もう十年以上も愛用しているという彼のトレードマーク。たんぽぽのように明るい黄色が黒髪によく似合っている。
    「今まで使ってたのって白とか黒とかだったろ? そういう色選ぶの珍しいよな」
     ポップの言うとおり、今までは地味な色を選ぶことが多かった。正直髪さえ纏まれば色などどうでもいいとさえ考えていたのだ。珍しい、という言葉をつい『お前らしくない』と変換しそうになり、マァムはかぶりを振る。
    「……もうすぐ春だし、明るい色もいいかなって思ったの」
     そっか、と笑うポップに上手く笑い返せない。お揃いと思われたのが嫌だったのではない。ただ何となく、気恥ずかしくなってしまうのだ。
    「わ、私の髪の色にはあんまり似合わないでしょ? お店の人にも違う色にしたらって言われたもの」
     誤魔化すように早口で告げるとポップが目を丸くする。
    「はぁ 何だよそれ! おまえが選んだもの『似合わねえ』なんて言いやがる奴がいたのか」
     商家の生まれということもあってか、ポップは商売人の接客態度に厳しい。店の名を教えろと憤るのを「違うの違うの」とマァムが制する。
    「ごめんなさい! 言い方が悪かったわ。お店の人は良くしてくれたのよ。これもきっと似合いますよって言ってくれたし」
     己の心情を隠すために優しい店主を悪者にしてしまうところだった。マァムは深く反省する。ポップはよく分からない、という顔をした。
    「何だよ。実際よく似合ってんじゃん。あんまり気に入ってねえのか?」
    「そんなことないわ……」
     さらりと褒められ頬に熱が集まる。新しい髪紐は丈夫でしなやかで、無理に引っつめなくてもしっかり纏まる。そしてたんぽぽのように明るい黄色はとても鮮やかだ。気に入っていないはずがない。
    「本当によく似合ってるぜ」
     にこにこと笑うポップに「ありがとう」と小さい声で返す。お互いに真正面から本音をぶつけ合ってきた相手なのに、何故か時々こんなふうに上手く話せなくなることがある。ポップは呆れてないだろうか。嫌な思いをしていないだろうか。後になっていつも悔やむのに、今日もマァムは上手に笑顔が作れない。
    「マァム?」
     心配そうにポップが顔を覗き込んでくる。せっかく一緒にいるのに彼の顔が曇るのは嫌だ、とマァムは思った。早鐘のように打つ心臓を宥めながら、言えずにいたことを口にする。
    「あのね。この色、私もポップのバンダナに似てるなって思ったの。それで、それでね。私もこの色を髪に着けてみたいなって、思ったの。……大好きな色だから」
     はあ、と息継ぎをしてポップの顔を見ると、先程よりもだらしなく頬を緩ませている。にやにやと見つめられるのがやっぱり気恥ずかしくて、マァムは頭頂部の髪紐を両手で覆い隠した。
    「だから、そんなにじろじろ見ないでってば」
    「だってよお〜」
     嬉しいとか幸せという言葉を絵にしたら今のポップの顔になるのかもしれない。ずっとその笑顔を見ていたい気もしたけれど、自分がどんな表情をしているか不安だった。顔を逸らしたマァムにご機嫌な声が聞こえてくる。
    「なあなあ、今度はもっと長いリボンで結ってみてくれよ。何なら今から買いに行くか?」
     それでは本当にお揃いのようではないか。マァムは顔を赤くして振り返る。
    「よ、予備の紐も買ったし、今は、いらない!」
    「そっか。『今は』ね」
     含み笑いをするポップが憎らしくなる。マァムは再びふいっと顔を背けた。束ねられた髪房が頭の動きに従ってふわりと揺れる。
    「一気に春が来たみてえだな」
     薄桃色と明るい黄色を纏うマァムにポップが微笑む。
    「ありがと」と改めて礼を返しながら、マァムはまだ隠していることをポップに伝えるべきか悩んでいた。
     予備に買った髪紐はあなたの服とお揃いの綺麗な緑色を選んだの、と。
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