ともしびを手に 1午前の最後にある座学の途中で、教育係が資料を探しに行くといって部屋から出て行った瞬間、魏無羨は目の前に広げられた教則本を机の脇に追いやると、懐から厚い紙束を取り出して座学とは全く関係の無い書き付けを始めた。
教育係が口を酸っぱくして姿勢を正しくしろと言っても、集中するとつい姿勢が前屈みになってしまう。高い位置で結ばれた一つ結びから髪が頬に落ち掛かるのを払うと、輪郭がまだ子ども特有のまろみを帯びた少年の横顔が現れる。魏無羨は大きな瞳を輝かせながら、紙束に猛然と書き付けていく。
「今度は何を作るつもりだ魏無羨」
一応は真面目に授業を受けていたが、内容は退屈極まりない教則本だったので、隣に座っていた江澄は好奇心のまま、書き付けを覗き込みながら魏無羨に訊ねかけた。
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