「この度炎柱を拝命した煉獄杏寿郎だ。よろしく頼む、音柱殿」
初めて煉獄と向かい合い、快活明朗な声でそう告げられた時、宇髄はその数日前に食べたすももの事を思い出した。
柔い輪郭に少年のあどけなさをわずかに残し、興奮気味に頬を上気させた煉獄の顔が、つるりと瑞々しい小さな果実を連想させたのだ。黄と赤が混じった風変りな髪色も、見ようによってはすももっぽいかもしれない。
齧るとじゅわりと果汁が滴って、優しい甘さのあとを突き抜けるような酸味が追いかけてくる。
「宇髄でいいよ。柱として並び立ったからには対等、堅っ苦しいのはなしだ」
あえて素っ気なく返すと、煉獄は一瞬目を丸くしてから嬉しそうに表情を緩めた。案外人懐っこく笑うんだな。堅物なだけのお坊ちゃんではなさそうだと、それで一気に興味がわいた。
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