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    houzi_chaaa

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    houzi_chaaa

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    宇煉緊急ワンドロライ、お題「お前」で書かせていただきました。
    🔥さん的には怒りと呆れで無意識気味に出てしまった「お前」だけど、もっと砕けて接してほしかった💎さんにはそれが嬉しい…的なお話です。

    「この度炎柱を拝命した煉獄杏寿郎だ。よろしく頼む、音柱殿」
     初めて煉獄と向かい合い、快活明朗な声でそう告げられた時、宇髄はその数日前に食べたすももの事を思い出した。
     柔い輪郭に少年のあどけなさをわずかに残し、興奮気味に頬を上気させた煉獄の顔が、つるりと瑞々しい小さな果実を連想させたのだ。黄と赤が混じった風変りな髪色も、見ようによってはすももっぽいかもしれない。
     齧るとじゅわりと果汁が滴って、優しい甘さのあとを突き抜けるような酸味が追いかけてくる。

    「宇髄でいいよ。柱として並び立ったからには対等、堅っ苦しいのはなしだ」
     あえて素っ気なく返すと、煉獄は一瞬目を丸くしてから嬉しそうに表情を緩めた。案外人懐っこく笑うんだな。堅物なだけのお坊ちゃんではなさそうだと、それで一気に興味がわいた。

    「そうか! では遠慮なく! よろしく、宇髄!」
    「あー……でも声はもうちょっと抑えめで頼むわ……」

     ◇

    「君との合同任務は久しぶりだな!」
     出会った頃より精悍になった顔で煉獄が微笑む。柱としての自覚と経験に磨かれ、凛々しく研ぎ澄まされた横顔に宇髄は思わず目を奪われた。頼もしくなったもんだな、と引き結んだ唇の端に笑みが滲む。

    「なーに、俺とお前が力合わせりゃ百人、いや千人力よ」
     冗談めかしつつも勝ち気たっぷりに宇髄がニッと歯を見せると、煉獄が呼応するように力強く頷いた。その瞳の奥に揺らめく炎を垣間見て、宇髄は胸の奥がじわりと熱くなるのを感じる。
     早く、早く。互いの剣技を合わせて戦いたい。重なる呼吸はどんな音を奏でるだろう、どれほど鮮やかに燃えるだろう。駆け出したくなる気持ちを抑え込むように、宇髄は隣を歩く煉獄の肩に腕を回した。
     常人であれば気付かないくらい、本当にわずかに煉獄の背筋がびくりと強張る。

    「まあ、とっとと終わらせて温泉寄ってこうぜ、温泉」
    「相変わらずだな、君の温泉好きも」
     君、ね。その呼び方も、微妙に身構える体の方も、もう少し砕けてくれないもんかね。そういうところも好きだけど。うーん、と考え込んで宇髄は空を仰ぐ。
     暮れかけの空の真ん中を、虹丸と要が旋回していた。

     ◇

    「お前とは、しばらく口を利きたくない」

     乱れた布団の上によろよろと起き上がった煉獄が、宇髄を恨めしそうに睨みつけて言った。その髪が四方八方に跳ねて大爆発しているのを見て、宇髄は思わず小さく吹き出してしまった。煉獄の目つきがいっそうきつくなる。

     何度目かの合同任務で、宇髄と煉獄は見事下弦の鬼を討った。顔を合わせる事も滅多にないのに、互いの技も息もぴったりで、二人で剣舞でも踊っているのではないかと錯覚するほどだった。宇髄はそれが嬉しくて、任務中だというのにはしゃいで笑い声を上げてしまいそうだった。
     とにかく気持ちが良くて、昂って、そのあと訪れた藤の家で祝杯を上げた。普段はあまり飲まない煉獄も珍しく酒が進んで、二人でかなり酔った。とはいえ宇髄にとってはこれ幸い、ようやく転がり込んできた好機で。それを逃す選択肢など端から存在しなかった。
     今更何を言われたところで後悔などない。

    「ンだよ、合意の上だったろ」
     しれっと言い返せば煉獄がぐっと言葉に詰まった。お、ちゃんと覚えてはいるんだな。腹ばいになって頬杖をつき、不服そうな煉獄の顔を見上げる。切れ長の目元が真っ赤に染まっていた。
    「それはそれ、だ。俺はこれからの話をしている」
    「そもそも何でよ」
    「分からないのか?」
    「えー。分かんない」
    「確かに、俺は最初の時点で合意はした。が、さすがに限度というものがあるだろう」
     胸に腹に内股に。自分の体に無数に散った赤い痕を見つめて煉獄がどんよりと零す。
    「限度ねえ……」
     突けば突いただけあんあん鳴いて良がって、口づけだって何度もねだってきて、上に乗せれば髪振り乱して腰振ってたくせに。そのへんはすっかり忘れてるようだから、逐一説明して思い出させてやろうか。呆れ半分にそう思ったところで、宇髄ははたと気が付いた。

    「煉獄、さっき最初になんて言った?」
    「最初? しばらく口を利きたくない」
    「違う、その前」
    「その前?」
     煉獄が怪訝そうな顔で首を傾げる。しばらく空中に視線を彷徨わせてから、ああ、と呟いて宇髄を見下ろした。

    「……お前?」

     きょとんとした表情で繰り返された言葉に、宇髄の胸がぞわりと高鳴った。一晩中体を繋ぎ続けてもう十分満足したと思っていたのに、最後の最後にまだあった。
    「いいな、それ」
     素早く上半身を起こして、戸惑う煉獄に真正面から詰め寄る。やっと本当の意味で煉獄と目が合った気がした。美しく燃える、焔の色。

    「何を嬉しそうにしているんだ?」
    「はは、何だろね」
    「意味が分からん!」
    「口利かないんだろ?」
    「……む」
     眉を顰める煉獄に顔を寄せて、その頬を唇で食む。いつか思い浮かべたあの果実のように。
     そこは乾いた涙と汗で塩辛かったけれど、宇髄にとっては何よりも甘美だった。
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