セミ達がミンミンミンジージージーとひと夏の儚い叫び声を上げている、8月も半ばのとある日。共にアキバに行く予定だった友人が夏風邪を引いたらしく、遊ぶ予定が一つドタキャンされてしまった俺は全身で「暇」をアピールするようにゴロゴロと棺桶の上で動く。隣の作業部屋からはうーんとかあーとか、唸り声にも似た声が漏れ出てきていた。声の主である相棒の狼男はと言うと、こんな絶好の遊び日和にですら真面目に創作に打ち込んでいるらしい。クリエイターとしてはこの上ない優等生ではあるが、それはそれとしてこんな外に出て踊り出したくなるような日まで作業を続けられると友人としては多少心配になる。なかなか根詰めてるようだし、無理してなければいいんだが。なんて考えながら棺桶の上でゴロゴロしていると、勢いよく部屋のドアが開いた。目をやるとドアを開けたのはまさに今気にかけていた相棒だった。いや今家には俺とジョーさんしかいないからそりゃそうなんだけど。
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