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    umino_fukami

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    umino_fukami

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    いるみんバーコレ衣装が海賊モチーフと聞いて町娘夢主と出会うお話。もう少し書いてりゅさんたちと合流の所まで書きたかった。

    カラン、とドアベルが鳴った。時刻はまだお店を開くには早い15時。開店準備の掃除で扉を開けていたから間違えて入ってきてしまったのだろうか。港町ということもあって船で来るお客さんも入りやすいようにカフェのような店の外観のバーだからそれも要因かもしれない。
    仕込みの手を止めて、入ってきてしまった客を出迎える。申し訳ないが出直してもらうか、他のお店に行ってもらおう。視界に飛び込んできたのは紫の髪を後ろで結んだオールバックの美人さんだ。線は細いが手首はしっかりしているし恐らく男性だろう。ここら辺では見かけない美男子にうっかり見惚れてしまった。ハッと気付いて頭を下げる。
    「あのぅ、すみません。ここ、カフェじゃなくてバーなのでお店は17時からなんです……」
    「あぁ、そうなんだ。残念」
    顎に手を当てて橫を向いて考えているその姿ですら絵になっていて、挙動をつい視界で追ってしまいそうになる。いけない、いけない。目の保養をしてる場合じゃない。相手を伺うと考えが纏まったらしく、蕩けるような微笑を浮かべてこちらを向いた。
    「それじゃあ、また出直すよ」
    「えっ、あ、ありがとうございます」
    「ここの料理が美味しいって聞いてたから、楽しみにしてるね」
    「わっ、ありがとうございます!」
    「ふふっ……それに、お姉さんと少しお話したいからそこの席、予約で」
    指差したのはカウンター席の一つで、確かにいつも私が立っているところの前だ。たまたまかもしれないけれど、ピンポイントで指定された席に驚く。
    「かしこまりました、お名前を伺ってもよろしいですか?」
    「……イル、で」
    「イルさん、お待ちしてます」
    私が席予約プレートを取り出すと「よろしくね」と微笑んでドアベルをカランと鳴らして出ていった。帰り際にふわりと彼の香りが薫る。その残り香だけでもクラクラしてしまいそうなのにあとでカウンター越しとはいえお話して大丈夫だろうか。きっとドキドキと心臓が落ち着かない事だろう。
    さて、期待されている事だし仕込みを頑張らなければ。裏へ戻って貝の身を剥がしていると再びカランとドアベルが鳴った。一日に何度も間違えて入ってくるということは珍しい。予約プレートを置いた時には気がつかなかったけれど、もしかしたらさっきのお兄さんが忘れ物をしたのかもしれない。
    「何か忘れ……」
    目の前に突きつけられたのは鋭利な刃物。咄嗟に両手を挙げて言葉を切った。お店の中には数名の屈強な男たちがゾロゾロと入ってきていた。
    「この店にある酒ありったけ持ってこい」
    「あぁじゃあ肉料理も頼むわ」
    「おねーさんお酌してくれよなぁ!」
    ゲラゲラと笑って好き勝手に言いながら空いている席に座ってピカピカに磨き上げたテーブルの上に足をドンと置いた。置いた勢いでテーブルに泥が跳ねる。あぁ、やだ、やめて。
    「俺たちが何者か分かるだろ?」
    私に刃物を向ける男がニヤリと笑う。その顔には見覚えはあった。ここ最近、近くで飲食店を中心に被害が頻発していて、目撃情報を元に作られた指名手配書の人たちだ。無言で頷くと男たちは満足そうに笑った。彼らの言う通りにしなければ。確か、強盗の他にもお店の人を傷付けて全治3週間の怪我を負わせたとかそういうのもあった筈だ。下手に動けば私も同じような目に合うだろう。震えながらキッチンに立った。男は刃物からピストルに持ち変えた様で銃口がこちらに向いている。
    (誰か、助けて……誰か……)
    声にも出せないSOSを心の中で呟く。でもまだ開店前だから他のお客さんが入ってくることもないし、大声で叫んだり店の物を壊してはいないからその音に気がついた人が駆けつけてくることもない。
    泣きながら料理を作る。出来たものから出していくと彼らはお酒と共に食べていく。飲み終わった瓶が投げ捨てられてガチャンと音が鳴った。彼らの回りにはガラスが散乱していて荒れ放題だ。
    「おいネーちゃん!もっと酒を寄越せ! あんだろ他にも!」
    「貴方たちに飲ませる酒はもうないですよ」
    「あァ!?」
    カラン、とドアベルが鳴ったかと思えば突如彼らに反抗するような静かな声が店内に響いた。
    男たちがそちらの方へ向いて、私も料理の手を止めてそちらを向く。お店の扉に寄り掛かるように立っていたのはイルさんで。ジトリと彼らを睨め付けていた。
    「随分とまぁ威勢のいいニィちゃんだなァ? 」
    「おいおい、俺たちが誰か分かって言ってんのかぁ?」
    彼への威嚇にまた近くにあったテーブルが蹴飛ばされ、倒れた拍子に辺りの物を巻き込んで物が壊れた音がした。荒らされていく店内よりも、彼が心配だ。男が睨み付ける彼の胸ぐらを掴んだ時、イルさんが殴られてしまう!とカウンターの外へ出ようとすると彼は私に一瞥して笑う。それが言外に「大丈夫」と言っているようで私はそこから動けなくなった。
    「ほぉー、お前店の主人より美人じゃねーの、こっちに相手してもらうか?」
    「お前そっちの気があんのかよ」
    「こんだけ美人なら胸の無い女って思えばいけんだろ」
    聞きたくもないような低俗な言葉が彼らの口から次々に放たれる。男がニヤニヤと薄ら笑いをして彼の顔に振れようと手を伸ばした瞬間、パシンとイルさんが手を振り払った。
    「ほんと笑えない。貴方たちが俺を好きに出来るとでも?身の程を知りなよ」
    冷たい声色に一番離れていた私でさえもゾクリとした。私と話していた時は紫色の瞳も穏やかな色をしていたのに、今は夜を思わせる冷たくて深い色に変わっている。固唾を飲んで見守っていると彼の胸ぐらを掴んでいた男が腕を振り上げた。殴られてしまう瞬間は見れなくてぎゅっと目を瞑るけれど、聞こえてきたのは殴りかかった男の悲鳴。恐る恐る目を開けると、彼の顔面スレスレで拳は止まっていた。殴りかかった腕をギリギリと握っている。痛みで掴まれていた胸ぐらも放されていて、少し自由がきくようになった彼はそのまま掴んでる腕に膝を当てた。鈍い音がなって、更に男の悲鳴が上がる。男たちが何か叫んでイルさんに襲いかかるけれど、彼は軽い身のこなしで避けては一撃を加えてあっという間に全員伸してしまった。流石に仲間に当たる可能性があったから、使われていたのはナイフばかりだったけれど、みんな武器を持っていたのに。思っていた以上の強さに怯んだ男たちは動ける者が動けなくなった人を抱えて店から出ていく。すっかり人気のなくなった店内に力が抜けた。ペタンとその場に座り込む。
    「すごい……」
    「怪我、ありませんでした?」
    「あっ、は、はい!お陰さまで……あ、あの大丈夫でした?」
    「あぁ、大丈夫。俺、こういう奴が相手なの慣れてるから」
    ニッコリとこちらに向ける笑顔はさっきとは打って変わって蕩けるような笑みだ。でもその笑顔もすぐに消えて、悲しそうな表情に変わる。
    「君の大事なお店を汚しちゃってごめんね」
    腰が抜けてしまった私を立たせながら彼が周りを見渡す。辺りは男たちが飲み食いしたり蹴ったり投げたりしてお皿やグラス、瓶の破片が点在していて、ピカピカだった店内の壁にもあちらこちらにソースやお酒が飛び散っている。見るも無惨なその光景に心を痛めてくれたのだろう。でもそんなの、私にとっては些細な事だ。今日はお店を開けるのは難しいけれど掃除をすればまた綺麗なお店になるし、足りなくなってしまった物はまた買い足せばいい。
    「いいえ、そんな……あ、お礼がまだでしたね。助けていただいてありがとうございます!お礼をどうかさせてください!」
    「お礼目的で助けたんじゃないから、困ったな……」
    眉尻を下げて困ったように笑う彼をじっと見つめる。私としてはお礼を何かしらでさせてもらわないと気が済まない。日を改めてフルコース無料提供と言われても構わない。祈るように見つめ続けていると「あぁ、そうだ」と何やら楽しい事を思い付いたのかこちらを向いた彼は口元に笑みを浮かべていた。
    「今日はお店を閉めるよね?」
    「そうですね、これじゃあ開けないので……」
    「じゃあ、これから俺とデートしてくれる?それがお礼でいいよ」
    「わ、私なんかとデートがお礼でいいんですか?」
    「ふふっ、勿論。俺の手を取ってくれる?」
    「はい」
    イルさんの差し出した手のひらに手を重ねると、ぐいと引っ張られる。そのまま彼の胸に飛び込んでしまう。私一人を余裕で受け止めると、するりと細いけれどしっかりと男性の手のひらで私の頬を撫でた。
    「ごめんね」
    「えっ」
    「もう、ここには帰ってこられないから」
    唐突な謝罪に見上げるとイルさんはにっこりと見惚れてしまう微笑を浮かべた。

    「俺。海賊だから欲しいものは手に入れたい主義なんだ」
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    umino_fukami

    MOURNINGいるみんバーコレ衣装が海賊モチーフと聞いて町娘夢主と出会うお話。もう少し書いてりゅさんたちと合流の所まで書きたかった。カラン、とドアベルが鳴った。時刻はまだお店を開くには早い15時。開店準備の掃除で扉を開けていたから間違えて入ってきてしまったのだろうか。港町ということもあって船で来るお客さんも入りやすいようにカフェのような店の外観のバーだからそれも要因かもしれない。
    仕込みの手を止めて、入ってきてしまった客を出迎える。申し訳ないが出直してもらうか、他のお店に行ってもらおう。視界に飛び込んできたのは紫の髪を後ろで結んだオールバックの美人さんだ。線は細いが手首はしっかりしているし恐らく男性だろう。ここら辺では見かけない美男子にうっかり見惚れてしまった。ハッと気付いて頭を下げる。
    「あのぅ、すみません。ここ、カフェじゃなくてバーなのでお店は17時からなんです……」
    「あぁ、そうなんだ。残念」
    顎に手を当てて橫を向いて考えているその姿ですら絵になっていて、挙動をつい視界で追ってしまいそうになる。いけない、いけない。目の保養をしてる場合じゃない。相手を伺うと考えが纏まったらしく、蕩けるような微笑を浮かべてこちらを向いた。
    「それじゃあ、また出直すよ」
    「えっ、あ、ありがとうございます」
    「ここの料 3586

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