ギラギラと熱い照明に照らされて踊るその姿を見た時、木下はその人をまるで月のように綺麗だと思った。
1ヶ月前にこのライブが最後のライブになるとマネージャーから知らされた、それもそうだと木下は自分のやらかしてきた事を振り返る。
ライブステージでは緊張してガチガチのロボットダンス、握手会では小学生並みの事しか話せずお客さんをガッカリさせる。何回やっても改善されずマネージャーから木下は何回も怒られた、顔が良いだけではやっていけない業界だ、とも言われた。
そして月日が経ち、木下は今日が最後だからと記念に他の同年代のアイドルのライブを全部見ようとステージ袖で自分の出番までライブを見ていた。
休憩に入る1つ前のアイドルは月のように綺麗な瞳に泣きぼくろ、スマートな整った顔に汗で時々光る黒髪、硬派な人とは彼の様な人の事を指すのだろうなと木下は思った。
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