いつか書きたいmzok両片想いアパートの軒下に入り、傘をとじて雨粒を払った。ついでに、靴の中で足を動かしてみると、水がぐじゅと音を立てる。
そうしている間にばしゃばしゃと音を立てて走る足音が聞こえ、顔を上げると、傘もささずに隠岐が走ってきていた。
俺の隣にたどり着くと、ふぅと息を着いて笑った。
「ひどい、雨ですねぇ」
「隠岐、びしょぬれやん、傘持ってなかったん?」
「この前折りたたみつこて、はぁ、鞄に戻すの忘れてて」
黒髪にへばりついた桜の花弁をとってやると、ああ、せっかく咲いたのに、と憐れむように言った。
「はよ入ろ。風邪ひくで」
その白い額にはりついている黒い髪を輪郭をなぞるようにして耳にかけてやると、隠岐は視線を逸らした。まるで照れているように。
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