一生、師匠ッスから「…もう、いいか」
仮想空間の事務所で男は呟いた。諦めの言葉を口にすると気持ちは加速してしまう様だ。
この世界はプレイヤーがプロデューサーとなり、担当アイドルを育成しプロデュースする没入型の体験ゲームだ。
最初こそ楽しくやっていたのだが、担当のイベントがなかなか回ってこなかったり、ガシャで引けないことが続きモチベーションが下がってしまったのだ。
また段々と現実世界の仕事やプライベートも忙しくなり、この世界に飽きた。
それでもこのアイドルには沢山の情熱とお金をかけた。だから例えバーチャルの存在でも最後くらいは挨拶をしておきたいのだ。
「師匠!」
そんな事を考えているとタイミング良く現れたアイドルに話しかけられる。ちょうど良かったと名前を呼ぶと元気良く返事をする。
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