電波は方々道はひとつ、夜はこれから 朝からずっとチェズレイは方々へ電話を掛けている。
電話が終わったかと思えばメールをチェックしたり情報収集したりのためにタブレットを注視していて、モクマはその様子を見ながら昼食のリクエストや掃除の有無を問いかけていたがチェズレイは生返事だった。
昼食を出したさいに晩酌の約束を取り付けはしたものの、この時も会話をしたわけではなく電話中のチェズレイへ食器とメモを差し出しただけだった。それでも晩酌のお誘いのメモを確認するとやわらかく微笑んでうなずいてくれたからモクマの心は踊った。
ようやく一段落ついたチェズレイがすでにソファに座って晩酌を始めているモクマの隣に腰を下ろした。
「終わった?人気者だねえ」
「遅くなってすみません、指示が終わらなくて」
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