邂逅 -二話-進捗広いリビングの中心に置かれたソファに身体を沈めていたフロイドは、重たそうにその身を起こしてヒタヒタとフローリングの上を歩く素足特有の音を出しながら全面窓から外を眺めた。重たく押し潰されそうな曇天が続くこの数週間は、まるでフロイドの心の中を表しているかのようだ。
ここはフロイドが会社近くに借りているマンション、車で約十五分ほどの静かな住宅街に佇む高級マンションの上層階に住むフロイドの部屋の表札には彼のファミリーネームが刻まれている。カウンター付きの広いシステムキッチンがある3LDKに双子のジェイドと暮らしているが、二人では若干広く感じるこの部屋に住むことを決めたのは理由があった。
社会に出てから陸で暮らす部屋を探している時に出会ったこのマンションは全面窓からは賑やかな街並みの先にフロイドの故郷である母なる海が広がっている。陸に上がってナイトレイブンカレッジに入学してからも、海は当たり前のようにフロイドの身近にあった。彼の本性は海のギャングと言われるウツボの人魚なわけで、やはり陸でどんなに楽しい世界があっても離れ難い存在なのだ。
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