アルコールで上がった体温が疎ましく、日車はネクタイを緩めると襟元のボタンをひとつだけ外した。節電のためだろうか、高めの温度に設定されているであろうエアコンの生ぬるい風が首筋にあたる。
「日車さん。ビール追加で頼みます?」
「あぁ、頼む」
清水は日車の返事に「はい」と明るく答えると、「高木さんはどうしますか?」と斜め向かいに座る黒髪の女性に声をかけた。名前を呼ばれた高木が「うん、私もお願い」と清水に答えるのを眺めながら、日車はわずかにジョッキに残っていたビールを飲み干した。
「日車くん、ちゃんと飲んでる?」
「飲んでます」
すっかり出来上がっているらしい高木は、そっけない日車の言葉に気分を害した様子もなく「そっかぁ」と上機嫌に笑った。
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