夏空の大輪 一緒に行こうと誘われた夏祭りに、マトリフは僅かに浮き足立っていた。夜空を灯す色とりどりの提灯に、方々から漂ってくる屋台の匂いに、どうしたって心が弾む。ただそれを、最近恋人になったばかりのガンガディアに悟られるのは格好がつかないように思えて、マトリフはズボンのポケットに手を入れたままゆっくりと歩いた。
少し前を歩くガンガディアは、マトリフの歩調に合わせて歩き、何度も振り返ってはマトリフの存在を確かめているようだった。迷子になる歳でもないのに、生真面目で心配性の恋人はマトリフから目を離してはいけないとでも思っているらしい。
「手、繋ぐか?」
見かねてマトリフが言えば、ガンガディアは控えめな笑みを見せてからマトリフの手をそっと握った。ガンガディアの大きな手に包まれると安心する。ガンガディアに手を引かれて人混みを歩いた。
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