はじめての後で「もう起きていたのかね」
背後から声をかけられて、マトリフはびくりと肩を跳ねさせた。まだ夜が明けきっていない海辺に、マトリフは一人で座り込んでいた。
「……おぅ」
マトリフは振り返らなかった。顔を合わせるのが気まずかったからだ。
ガンガディアは屈むとマトリフの背にそっと手を当てた。
「身体は大丈夫かね。昨夜はあなたに無理をさせてしまって……随分と辛そうだったが」
「言うな言うな。夜の話を朝にするのは野暮だぜ」
マトリフはガンガディアの手を避けるように立ち上がった。回復呪文をかけた身体は傷ひとつない。だがガンガディアに触れられた感触は消えていなかった。囁かれた言葉も耳に残っている。眼差し力強さもそこに籠った熱も、全てが目を瞑っても思い出されてしまって、マトリフは羞恥で肌を赤くさせた。
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