火竜の鱗 マトリフは魔導書を広げた。既に契約は済んでいる。契約出来たということは、不可能ではないのだろう。
ガンガディアから託された火竜変化呪文の魔導書を、マトリフは結局は手放さなかった。目の前で燃え尽きたガンガディアの形見のように思えたからだ。
火竜変化呪文は魔法使いの体力では使いこなせない。それをマトリフは十分にわかっていた。だからこの魔導書を使えなくても、形見として持っていればいい。マトリフは最初こそそう考えていた。だが時間が経つにつれ、マトリフはガンガディアの影を追うようになっていった。
マトリフは常に火竜変化呪文の魔導書を持ち歩くようになった。そして何度もそれを読み返してはガンガディアのことを思った。
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