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    なりひさ

    @Narihisa99

    二次創作の小説倉庫

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    なりひさ

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    ガンマト。酔ってアバとガンガを見間違えるマト。ハドアバ同軸。

    #ガンマト
    cyprinid

    酔い「まだ酔ってねぇよ」
     とマトリフは酔っ払いの常套句を呂律の回らない口で宣った。マトリフは酒好きだがあまり強い方ではなく、小一時間もすればすっかり出来上がってしまった。
    「おいガンガディア、酒持ってこいよぉ」
     机に突っ伏しているにも関わらず、マトリフはさらに酒を所望した。だが今ここにガンガディアはおらず、それを忘れてガンガディアを呼んでいるあたり、マトリフの酔い加減が伺える。
    「そろそろ止めておいたほうがいいですよ」
     一緒に飲んでいたアバンが言う。アバンはゆっくり飲んでいたので、まだ酔ってはいなかった。むしろマトリフがこうなるとわかっていたので、酔わないように酒の量を調整していた。
    「大丈夫かよ師匠」
     赤い顔をしたポップがマトリフの肩を揺さぶる。ポップも酔いが回っているようで、緩んだ表情をしていた。
     ポップが酒を飲める歳になったからと三人で集まって飲んだのだが、マトリフもポップも酒に弱いので、アバンは二人の介抱をする羽目になっていた。
     アバンは新しいコップにたっぷりと水を注いでマトリフとポップの前に置いた。
    「さあ二人とも水を飲んで」
    「水じゃねえよ、酒だってぇ」
     マトリフが不満そうな声を上げる。ポップは素直にコップの水を飲んでいるから、マトリフのほうがたちが悪かった。
    「はいはい、さあコップを持って」
     アバンはマトリフの手を取ってコップを握らせる。するとマトリフはアバンの顔をじっと見た。
    「なぁ……もうちっと飲んでも良いだろう?」
     声音が変わったことに気付いてアバンは目を瞬く。なんというか、ちょっと色っぽいような気がした。
    「マトリフ?」
    「こんなの全然酔ってねえよ……だから……くれよ」
     撫で付けた白髪がはらりと落ちる。酔ったせいか潤んだ瞳がいつもと違う色を帯びていた。
    「飲み過ぎですよ」
     アバンは残っていた酒を遠ざけようと手を伸ばす。自然とマトリフに近づく形になった。
     するとマトリフの手がアバンの顔に触れた。マトリフの指がアバンの眼鏡の縁をなぞる。乾燥した暖かな手の感触に、アバンは固まった。
    「良いだろ……ガンガディア」
    「私はガンガディアじゃありませんよ!」
     まさか眼鏡でガンガディアと間違われたのだろうかとアバンは呆れる。マトリフはいつもこんなふうにガンガディアにねだっているのかもしれない。
    「師匠、ガンガディアじゃなくて先生だってぇ」
     あははは、と笑いながらポップが言う。笑い上戸なのか、なにかツボにハマったのか、ポップは笑いながらマトリフの肩をばしばしと叩いている。
    「ポップ、あまり強く叩いては」
    「酒くれよぉ」
    「あははははは」
    「この酔っ払い共、いい加減にしなさい!」
    「怒るなよガンガディア」
    「ガンガディアじゃありません!」
     もうどうしてくれよう、とアバンが酒のせいではない頭痛を感じていると、マトリフの腕がアバンに伸びた。マトリフは腕をアバンの首にかけて、思いのほか強い力で引き寄せると、その胸に顔を埋めた。
    「眠い。寝る」
    「自由過ぎませんか」
    「おれも先生と寝る!」
    「ああもう、私は枕じゃありませんよ!」
     アバンはマトリフを抱えたままポップも担いでソファに寝かせた。
    「先にマトリフを送ってきますから、ポップは良い子で待っていてくださいね」
     ポップが良い返事をしたのでアバンはマトリフを抱え直してルーラで洞窟へと向かった。
     アバンが洞窟の前に降り立ってもマトリフは起きる様子はなかった。全く警戒することなく眠っており、それをアバンは複雑な気持ちで見た。
     アバンはこんなふうに眠るマトリフを見たことがなかった。旅の途中だったとはいえ、マトリフは仲間の前ですらこんなに気を抜いて眠ることはなかった。
     今のマトリフはアバンをガンガディアだと思って無警戒に眠っている。あの頃敵対していた相手に対してだ。
     だがアバンはそんな気持ちを丸めて捨てた。
    「ガンガディア」
     アバンは洞窟に向かって声を上げる。すぐに大きなトロルが顔を見せた。
    「すみません、マトリフが酔っ払っちゃって」
     アバンとマトリフを見てガンガディアは顔色を変えた。ぴりついた空気にアバンは笑顔を貼り付ける。ガンガディアは激昂するなんてことはなく、だが感情をどうにか抑えた声で言った。
    「すまない。大魔道士が面倒をかけたようだ」
     ガンガディアがマトリフに向かって手を伸ばす。早く寄越せと言わんばかりの雰囲気に、ガンガディアの独占欲が色濃く滲んでいた。
    「いえ、迷惑だなんて。ほらマトリフ、着きましたよ」
     言いながらアバンはマトリフをガンガディアに渡そうとしたのだが、引き離されると思ったのかマトリフはアバンの胸に顔を擦り寄せた。
     ガンガディアの顔に音を立てて青筋が浮き上がる。
    「これは、私をあなたと勘違いしているみたいで、ほら、眼鏡をかけているから」
     アバンはあたふたと言い訳をする。いや何故私がこんな言い訳をしなくてはいけないのだろうか。
     アバンは無理矢理にマトリフをガンガディアに引き渡すと慌ててルーラで飛び立った。

    ***

    「間違えるなんて、ひどいですよ」
     アバンに開口一番にそう言われて、マトリフは何のことかわからなかった。
    「何の話だよ」
    「この前に飲んだときの話ですよ。ガンガディアから聞いてませんか」
    「あぁ……あれか」
     そういえばガンガディアが何か言っていた気がする。酒が残った頭で聞いていたからあまり覚えていないが、確かアバンをガンガディアに間違えたとかなんとか。勇者に“お姫様抱っこ”されたマトリフを見てガンガディアがとても嫉妬したとかなんとか。
    「全然似てねえのになぁ」
     自分が間違えたにも関わらず、他人事のように言ってマトリフはアバンをまじまじと見つめた。アバンもガンガディアも男前だが、また種類の違う格好良さだし、そもそも体格が違いすぎる。見間違えるなんてあり得ないだろう。
    「ガンガディアを怒らせたようで焦りましたよ」
     アバンは思い出したように表情を曇らせてため息をついた。
    「別にお前には怒ってねえだろ。あの後あいつから激詰めされたのはオレなんだぜ」
    「懲りたらお酒は控えてくださいね」
    「あいつと同じこと言うなって」
     そこでふとマトリフは何か思いついたようにアバンを見た。
    「ああ、そうか」
     言ってマトリフは手を伸ばすと、アバンがかけていた眼鏡をすっと取ってしまった。
    「なんですか?」
    「お前が眼鏡をかけてるのが見慣れねえんだよ」
     一緒に旅をしていた頃のアバンは眼鏡をかけていなかった。再び眼鏡をかけた頃は疎遠になっていて会うこともなく、そのためにマトリフにとってアバンは眼鏡をかけていない印象のほうが強かった。
    「眼鏡を見れば彼のほうを先に思い浮かべますか」
     ガンガディアも形は違うが眼鏡をかけている。マトリフは口の端を上げた。
    「まあな」
    「眼鏡は私のトレードマークなんですけどね」
     マトリフは声もなく笑うと取った眼鏡を自分でかけた。度が入っていないから視界に大した変化はない。
    「これをかけてりゃ世界が綺麗に見えるのか?」
    「鎧と一緒ですよ。自分を守るためのものです」
    「あいつも似たようなこと言ってたな。あいつの眼鏡も度は入ってねえんだ」
     マトリフは硝子越しにアバンを見つめる。マトリフにはそこにいるのが十代の勇者のような気がしてならなかった。
    「やめないか」
     言葉と共にマトリフから眼鏡を取ったのはハドラーだった。ハドラーはそのまま眼鏡をアバンへと渡している。
    「なんだ、いたのかよ三流魔王」
    「まだ生きてたのか老ぼれ」
    「てめえよりは長生きする予定なんだよ」
    「油を売っていないでさっさとガンガディアのところへ帰れ。また煩く言われてはかなわん」
     ハドラーはまるでマトリフとアバンの間に割り込むように立ち塞がる。どうやらマトリフが酔ってしたことはハドラーの耳にも入っていたのだろう。
    「嫉妬かよ」
     うげぇ、と嫌悪感丸出しでマトリフが言えば、ハドラーは恥ずかしげもなくアバンを抱きしめてみせた。
    「大事なものを大事にして何が悪い」
    「ちょっと、ハドラー」
    「わかったよ帰ればいいんだろ。見せつけんなよ」
     見ればアバンも満更でもなさそうな顔をしている。なんだよつまらねえな、とマトリフはぼやきながら立ち上がって足音も荒く立ち去った。


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    なりひさ

    DONEガンマト「時の砂」その後の蛇足。弟子に会いたくて未来へ来ちゃったバルゴート
    なにこれ修羅場じゃん ポップは焼きたてのパイを持ってルーラで降り立った。アバンの料理教室で作った自信作である。折角なのでマトリフと一緒に食べようと温かいうちに持ってきた。
    「師匠ぉ〜ガンガディアのおっさん〜お邪魔するぜ」
     呼びかけながら入り口をくぐる。しかしいつもなら返ってくる返事がなかった。人の気配はするのに返事が無いとは、来るタイミングが悪かったのだろうか。ポップはそろりと奥を覗く。
    「えっと、これどういう状況?」
     ポップは目の前の光景に頭にハテナをいくつも浮かべながら訊ねた。
     まずガンガディアがマトリフの肩を抱いている。優しく、というより、まるで取られまいとするようにきつく掴んでいた。ガンガディアは額に血管を浮かべてガチギレ五秒前といった雰囲気だ。そのガンガディアに肩を抱かれたマトリフは諦念の表情で遠くを見ている。そしてその二人と向かい合うように老人が座っていた。ポップが驚いたのはその姿だ。その老人はマトリフと同じ法衣を着ている。かなりやんちゃな髭を生やしており、片目は布で覆われていた。その老人がポップへと視線をやると立ち上がった。
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