愛しい人「どうして? 和真さんが買ってくれたのに!」
寝室の床に叩きつけられ、ぐったりと横たわるたい焼き型クッションに駆け寄ろうとした私の腕を掴み引き止めると、和真さんはムッとした顔で答えた。
「そうだな。君はそいつを買ってから、片時も手放さずに抱えているな。その上、眠る時まで一緒とは」
「そうですよ、だって大事ですもん」
「……私よりもか」
「はい?」
思わず首を傾げてしまった私を見て、和真さんは決まりが悪そうに視線を逸らして手を離すと、ふんとそっぽを向いてベッドに寝転がってしまった。
ええ、と今さっき言われた言葉と彼の態度を分析しようとする。
私よりも、そいつが大事なのか、なんて。まるで恋敵に嫉妬してるみたいじゃない? と考えたところで、みたいじゃなくて、事実そうなのでは? と思い至る。
3255