帰 土埃、硝煙の香り、地鳴りのような怒号、鍔迫り合いの音、立ち込める血の臭い。
脇腹を掠めた刃が思ったよりも深く肉を抉り白いシャツに夥しい赤を滲ませているが、既に痛みを越えじくじくとした熱さしか感じない。それよりも肌の彼方此方に付けられた大小の傷が土埃に触れる度の鈍い痛みに軽く眉をひそめ、つくづく何故、戦う為の受肉に人の身と同じような痛覚や血が必要だったのかと思考の片隅で思いながら、刀に纏った瘴気のような敵の血を振って払う。上がった呼吸を整え、ぼやけ始めた視界で敵を見据える。
どうやら身から流れた血が多過ぎたようだ。だが、ここで倒れる訳には行かない。
滑らないよう柄をきつく握り直し、口をついて出る言葉は、
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