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    かさちこ

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    かさちこ

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    ハロウィン要素は添えるだけのいちゃいちゃしているくりひぜ。

    ##くりひぜ

    ハロウィンくりひぜ 毎年恒例になった外つ国の行事の日、催し好きな主によってこういった行事が行われる日は全振りが非番となる。厨から菓子の焼ける匂いが漂うなか、今年も遊び好きの刀が中心となって数日前から準備していた、さまざまな仮装姿で本丸中を歩いてはお決まりの文句で菓子を貰っていた。
    「あ、肥前さんだ! とりっくおあとりーと!」
    「ん」
     賑やかな気配に包まれながら、普段着のままの肥前がぼんやりとちゃぶ台にもたれて室内に据え置かれたテレビを眺めていれば、魔女の装いをした乱、南瓜を模した着ぐるみの秋田、目と口が書かれた白い布を被った誰か、が開けっ放しの襖から肥前を見付け例の言葉をかけて近づいてくる。
     あらかじめ用意していた菓子を差し出された南瓜の形をする容器に入れてやったとき、ちょうど茶器を乗せた盆を持った恋仲――大倶利伽羅が厨から戻り廊下から顔を出す。
    「大倶利伽羅さんも! とりっくおあとりーと♡」
    「ああ、……おい」
     ちゃっかりと乱が大倶利伽羅へ向けて容器を差し出すと、大倶利伽羅は心得たかのように頷いてから肥前に視線を向けて呼ぶ。肥前は恋仲のポケットに飴玉が用意されていることを知っていた。馴れ合うつもりはないなどと言いつつも案外と付き合いが良いこと、そしてとても優しいこと、それから恋仲に対して甘えることも知っている。
     手が塞がっているからあんたが渡せ、言外にそう伝えているのだ。片手で難なく盆を持つ事もできるはずなのに。
     だが肥前はこの刀がこんな風に甘えてくることが嫌いではない。
      立ち上がってのそのそと近づき、大倶利伽羅の上着のポケットから飴玉を一掴み取り出して三振りに渡す。
    「ほら……、んだよ」
    「ううん、なんでもない! 肥前さんも大倶利伽羅さんもお菓子ありがと、ご馳走さま♡またおやつのときにね!」
     乱が目を輝かせてその様子を見つめているのを胡乱げ見遣ると、にんまりと含み笑いで首を横に振り返される。ご馳走さまにも含みがある気がする。
     それに言及してしまうと薮蛇となりそうで口をつぐみ、乱に続いた秋田と幽霊の仮装のもう一振り――声から小夜左文字だと気付いた――からの礼に頷き返せば短刀達は足取りも軽やかに退室していった。
    「おかえり」
    「ああ、戻った」
     並び立って再び静けさの戻った室内に戻る。卓上に置かれた茶器を恋仲から引き継ぎ、急須に茶の準備をしていると声が掛かった。
    「あんたは仮装しないのか? 脇差連中で準備をしていただろう」
     確かに脇差連中に無理矢理引っ張り込まれ、仮装の準備の手伝いをさせられていた。(仮装にも誘われたが勿論断った。)しかしそれを大倶利伽羅へは話していないはずだが、よく知っていることだと肥前は思う。素振りは見せないが恋仲のこととなると割と知りたがりなのだ、この刀は……そういったところも、肥前には擽ったく、愛おしく感じる部分なのだが。
    「あー、あれは手伝っていただけだ。おれはしねえよ」
     それに、と肥前は心の中で続ける。
     コンセント近くにある電気ポットから湯を注いで定位置である恋仲の隣へと座り直すと同時に大倶利伽羅の片腕が伸ばされ、撫でるように髪を耳に掛けられる。そのまま指先で耳の形を辿られ、擽ったさに肩を竦めてから悪戯を仕掛ける刀に咎める視線を投げれば、柔らかな表情をした大倶利伽羅が金色の目元を僅かに綻ばせて見せる。これも肥前にしか見せない表情なことを知っている。
     ――それに。お菓子をくれなきゃ悪戯するぞなんて言わずとも、菓子に匹敵するほどの甘さをこの刀から貰っているのだ。
     大倶利伽羅の手が頬に移動し、口付けの気配を感じて肥前はそっと目を閉じるのだった。
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