私の好きな女の子の話 私には好きな女の子がいた。高校生の時から彼女のことを苗字で山村と呼んでいた。その凛とした顔立ち、透き通るような白い肌、すらりと長く伸びた手足、その場にいるだけで人の目を引いてしまう華やかさ、それなのに生粋の日本人だという。しかも、下町の蕎麦屋の娘。そのギャップに撃ち抜かれない者なんているのだろうか。
高校で同じクラスになった時は近寄り難く、恐怖すら覚えたものだった。しかし一度話せばその印象は一八〇度ひっくり返ることになる。実際の彼女はスクールカースト最上位の一軍にいてもおかしくないのに、クラスメイトの誰とでも気さくに喋った。何の取り柄もないわたしとも、だ。
山村は男にモテた。竹を割ったような性格の持ち主なので、他校からわざわざやってきたミスターも容赦なく振った。山村を射止める男がこの世にいるなんて、想像もつかなかったのだ。もしいるとしても世界チャンピオンだとか……わたしは山村のことを何だと思っているのだろう。
1770