獣の夢 夢を見ている。織部は自覚していた。時折こうして、指先まで自在に動かしている自分の身体の置き所が、夢の中であることに気づくことがある。
夕暮れの燃えるような紅に染め上げられた教室だった。腕に重いような違和があり、それはとても覚えのある感覚であると気づく。机に突っ伏して眠り込んでいた時の、枕替わりにした腕の重だるさ。夢の中なのに、どうやら自分は転寝から目覚めたところらしい。
窓際から右に一つずれた列の一番後ろ、滅多に登校しないから愛着も馴染みも薄いその場所からの眺めはいつもと同じだけれど、自分以外の生徒は一人もいないから視界を遮るものは何もない。授業中はなんて狭苦しい場所だろうと思うのに、こうしてみると不思議なほど広々と感じるようだった。
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