バク宙、二回転アレ見てみ、猪里。と、部活仲間である長戸に笑いながら服の袖を引っ張られた。指さされた方向に振り向くと上履き脱げかけの足が見えた。
…あきれた。またやってる。
長戸は自分にも笑ってほしいみたいでこちらに含み笑いを向けているが、愛想笑いをする気分でもなく、だからといって無視する訳にもいかないから、あぁ、とだけ曖昧な返事をして、その騒いでいる廊下から逃げ出すように階段を降りた。
どうしてああも目立ちたがり屋なんだろう。理解が出来ない。踊り場の壁に向かっていたら、先ほどの風景が蘇る。
皆んな虎鉄を見てる。
あの子も、その子も、その隣の子も。どの子も。
も〜、とかヤダ〜とか言って、みんな頬を染めたり笑ったりしてる。
男性にも女性にも、年上にも年下にも、平等に接する、誰にも優しい虎鉄。
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