中毒朝に貰った電話で急いで家へ向かう。
和谷は布団のかたまりになっていた。
大丈夫かと話しかけると
2度も吐いたらしい。
具合は見るからに悪そうで
顔面蒼白になっている。
病院に行くかと打診したが
これでも落ち着いたからいいと断られた。
「…なにか心当たりはないのか?」
「ねーよ、昨日までふつうだったのに…」
軽く目の端が赤い。眠れてないのか。
とりあえず、コンビニで買ってきた飲み物を開けるために手元に目線を落とした。
「…しん」
何か聞こえたような気がして、え?何?と声に出した。
「…ニンシン、したんじゃねーの…」
くぐもった声でそう伝えてきた。
にんしん?
……ああ。妊娠。
なにをばかな…と思うが、和谷の顔はいたって真剣だ。その蒼白さと相まって、どこか真実味のある雰囲気を醸し出していた。
長い夜が彼に与えた苦悩は凄まじいようだ。
確かにその…最近はよく、何の隔たりもなく繋がり合っている。
まさか、なぁ。
「責任、とってよね…」
半泣きみたいな顔で言ってくる。
ハイ…
という言葉の前に…そういえば。数日前に和谷のために買ってきた鯛焼きのことを思い出した。買ってきたはいいが、その日は猛暑で。和谷の家に持ってきたはいいが、話をするうちにまず打とうということになり…何やかんやですっかりその存在を忘れていたのだ。
「……ぁ」
「もしかして食べたのか⁉︎」
「……」
ばつのわるそうな顔をした和谷に、すこし笑いそうにもなったが、ぐっと堪えた。和谷は何も悪くない。
「責任は、とるから…」
だんだんと赤くなってきた恋人の顔を見ながら、そう呟いて抱きしめた。