【執事閣下】『心の在り処は咆哮の果て、雨音に消える』『心の在り処は咆哮の果て、雨音に消える』
いつまでも、いつまでも雨が降っている気がした。
思い出す度に砂嵐が過ぎって、脳裏の残像が歪んでいく。
嗚呼、これは誰かを探していた時の俺だ。
黒い渦となって、空を飲み込んだ雨雲が夜を思わせるほどに暗い。
その雲が降らす雨の音が耳の奥にこびり付いているかのように響き、雨に濡れた森の光景が記憶の片隅で広がっていく。
苦しい、空しい、悔しい、恨めしい、腹立だしい、。無意識に自分の心音を感じる箇所をジャケットごと掴み、そこからふつふつと湧きあがっていく嚙み千切りたい衝動が暴れそうなのを必死に堪えている自分がいた。
狼が敵を前にして牙を剝き出しにして飛び掛かろうとしている時の殺意に似ている。
1181