吸血鬼の睡眠事情妄想。ーー明け方、獣が王国を駆ける。
食材の詰まったリュックを携えて。
呼ばれて訪れたというのに、城は静かだった。
慣れた足取りで、地下へと進む。
寝室には棺桶が一つ。
そっと蓋をずらすと、美しい人が横たわっている。
白い頬に触れる。
冷たい感触にいつもほんのほんの少しだけ目覚めないのではないかと不安になる。
そんなことはありえないのだけれど。
「ユーリ」
城の主の名を呼ぶ。
「来たッスよ、ユーリ」
身動ぎすらしない彼をつつきながら、
献立を晩飯に組み直すかと考え始めていた。
(また、か。)
重い瞼。途切れる意識をなんとか繋ぎ留める。
招待状に適当な日付を書き込むと、遣いに託した。
殆ど自動的に体は地下へと向かい、棺桶に収まっていく。
退屈でなくとも眠りは訪れるのだと知ったのは、バンドを組んでからだ。
あれほど好ましく思っていた微睡みも、時間が惜しくなった今では厄介者である。
ふと、誰かに起こされなければ、自分は目覚めないのではないかと不安になる。
そんなことはありえないのだけれど。
「ユーリ」
すっかり馴染みとなった目覚めのさえずりを思う。
次のそれを楽しみにしつつ、蓋を閉じた。