親父が死んでから、ますますVIVIANITEに通うようになった。ギターを弾いて、歌って。音の渦の中にいる時だけは、孤独を感じずにいられた。
ある時、社長の目に留まったらしく、事務所に声をかけられた。歌う場を用意してくれると言われれば断る理由もなかった。喋るような仕事も増え、少し忙しくなったが、約束通り色々な場所で色々な歌を歌えた。マネージャーになった加賀もいい人だ。少し口うるさいけど、面倒を見てくれるのは助かる。
高校時代、趣味はギターを弾くこと、と言っていたけど、正確には音楽、だったと思う。
ギターの演奏に加え、どこにも公開しないのに曲を作ってみたり、好きなバンドの曲をアレンジしてみたり。その延長みたいなものだったけど、高校卒業後は音楽の専門学校へ進むことにした。他にやりたいこともなかった。
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