未定 真っ白の世界。それは雪や霧の暗喩ではなく、本当の意味で何も存在しておらず、ただただ白い空間だけが続く世界。どこが上でどこが右か左か。自分がどこに立っているのかすらわからなくなってしまいそうな危うい場所。そこに何か黒いものが見える。白い空間で唯一存在する「何か」。形はまるで影のようだが、よく見ると赤や青、白に点滅を繰り返している。「それ」は静かに横たわっていた。「それ」はまばたきを時折繰り返していた。その行為だけが「それ」が何かの生き物であることを指していた。「それ」は不意に大きく震えた。ただの影のような形が、徐々に震えに合わせて厚みを増し、輪郭がはっきりし始めた。「それ」は形を人間の姿に変えた。黒い上着に、目を刺すように鮮やかな赤いシャツを身につけた、人間の形に。
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