醒めない夢「お前さ、敬語やめろよ」
「なんでですか?」
煉獄は怪訝そうに宇髄を見た。髪を後頭部で無造作に団子にしているので、汗の浮かんだ剥き出しの首元がやけに目につく。それから、答えを待つ煉獄の顔に気がついて、さりげなく視線をずらす。
「なんでって、あれだ、なんか変な感じなんだよ、お前に敬語使われっと」
「変もなにも、先輩なんだから敬語使わないとでしょう」
「違うぞ煉獄、敬語ってのは相手を敬ってるから使う言葉なんだ」
「……なるほど?」
黄と朱の混じった瞳が、悪童めいた光を湛える。こいつ、かわいくねぇけどそこがかわいいんだよなぁ、と宇髄は思う。じーわじーわと、蝉の声が幾重にも重なって響いていて、暑さがいや増す。
「てめぇは俺のこと敬ってないのに、上辺だけ敬語にしても意味ねぇんだよ」
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