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    左崎むねにく

    Q. なんでむねにく?
    A.2文字だと字数制限にひっかかるため、好きな食べ物を足しました
    ~以下ふつうの自己紹介~
    主に字を書きます。年齢制限のあるものはパスワード限定にしました、ジャンル含めタグなりキャプションなりに書いてるからちゃんと読んでネ。

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    左崎むねにく

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    ホロシャの名前の話です。画像でしか上げてなかったので。

    #空放
    soraho

    願わくばこの呪いを標として「それで?」
     放浪者の言動はいつだって気まぐれだ。旅人の想像を飛び越えて、己の求める結果に向かっていく。今回は、名前を呼ばせてからじっと何かを欲しがるように見つめている。彼が必要としているものを旅人は測りかねていた。
    「えっと、呼んだけど」
    「ああ、人間は名前を与えるとき何か意図を織り込むことがあると聞いてね。君はいったいどんな意図でもって僕を縛ろうとしたのか気になったわけさ」
     そういうことか、と旅人は合点する。旅人とて、放浪者に「本来最初に与えられるはずの贈り物」を贈る立場になったからには、その名に溢れんばかりの願いを込めていた。振り返ってみれば必死すぎて滑稽かもしれないその願いは、一方で旅人にとっては今でも改心の出来だ。ともすれば言葉にするのが気恥ずかしくなってしまうほど。
    「……本当に聞きたい?」
    「随分勿体ぶるね。自信があるのかい? それとも、正義の側とは思えないような悪意に満ちた意味なのかな?」
     そんな言葉の応酬を仕掛けて、放浪者は皮肉げに笑った。旅人は観念したように肩を竦めて応える。
    「あのね、ミモザ。君にこの名前を贈るとき俺が君の前でどれだけ悩んでいたかを君は知ってるだろう?」
    「知っているとも。それだけ悩んだんだ。きっと大層な意味なんだろうね?」
    「……自信はあるよ。君の名前は僕からの二つの贈り物なんだ」
     ひとつ、と旅人は指を立て、空を指し示す。
    「遠い世界の星空には、旅する人の道しるべとなるような星座があるらしいんだ。命の星座とは少し違うものなんだけど」
     ふうん、と放浪者は首肯し続きを促した。少なくとも、聞く意思はあることに安堵して旅人は言葉を続ける。
    「君の旅路を照らせるように、その中で一番目立つ星座から明るい星の名前を貰ったんだ。永い放浪の中でも、光のある方を君が決して見失わないように」
    「それが、ミモザ?」
    「ああ。でもそれだけじゃない」
     放浪者は俯きがちに頷く。
    「二つあると言っていたからね。もう一つは何だい?」
    「ミモザには同じ名前の植物があるんだ。アカシアとも呼ばれるけれど、古くは別の植物を指す言葉なんだって。花言葉は『幸せ』『豊かな感性』『繊細な感情』」
    「僕にないものをあげつらったみたいじゃないか」
     俯いたままぽつりと呟く放浪者の頬に触れ、旅人は目線を合わせて首を横に振った。
    「ミモザ。俺は君が実はとっても繊細な心を持ってるって信じてるよ。だからこれは俺からの願いだ。君が放浪の中で、豊かな感性を育み幸せを得られますように。俺はそう願ってる」
     言い切った旅人の手を振り払い、放浪者は熱を持つ頬を隠すように背を向ける。
    「……君、誰にでもそうなのかい?」
     華奢な後ろ姿が、消え入りそうな声を響かせた。
    「あのとき、消えようとした君に俺は少しでも幸せを与えたかった。それだけだよ」
     旅人はあえて背に触れず、そう言った。放浪者の知る由もない寂しい笑顔を浮かべて。
     結局、放浪者はそれっきり背を向けたまま立ち去った。物陰から様子を見ていたパイモンを手招きしつつ旅人は独りごちる。
    「重すぎて嫌われちゃったかな……」
     その答えを知っているのは、まだ放浪者だけだった。
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