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    misaki_MHR

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    高校生の少年(ララフェルヒカセン)とジムのインストラクターをしているオルシュファンの現パロクリスマスリメイクです

     クリスマスは何か予定はあるか? と聞かれて、多分家の手伝いかな、と、寂しい返事をした少年であったが、一緒に過ごせたら嬉しかったのだが、仕方ないな……と寂しそうにオルシュファンが言うものだから、これはもう、やるしかない、と少年は思った。
     どうにか都合をつけ、前日からのお泊りクリスマスにこぎ着けることには成功したものの、正直なところ、少年には誰かと、それも恋人と過ごすクリスマスがうまく想像出来ないままだった。
     クリスマスと言えば、両親に弟と妹、祖父母と、大人数で過ごすのが定番で、それも店の飾り付けを手伝わされ、むしろ忙しい思いをすることが多い日だった。そもそもクリスマスというのは、実家も忙しい日であるから、くたびれて眠り、その報酬としてのプレゼントをもらう、という、なんともロマンスに欠けた印象が強い。一般的な家庭がどんなクリスマスを過ごすのかも良く知らなかったから、オルシュファンとどうクリスマスを過ごしたら良いものか、友人たちに尋ねるところから始まったのである。
     ある友人は、とりあえずプレゼントを渡すのが良いと思う、と言い、またある友人は、よくわからないけど、一緒に歌を歌うと良いと思うと、良い声で賛美歌を歌い始めた。さすがにそれはびっくりしたけれど、テレビで見かけるクリスマスは、確かにプレゼントを交換しあい、ケーキなどを食べ、歌ったりなどをしている気がする。それって誕生日とあんまり変わらないのかなあ、と言うと、まあ、大昔の聖人の誕生日だから、大体同じことになるんじゃないかな、と、友人は言った。確かにそうかも知れない。なお、その友人たちもそれぞれクリスマスは恋人と過ごすという。彼らに、そっちは何をするの、と尋ねると、なんとはなしにはぐらかされてしまったが。

     そしてクリスマス当日。ちょっと気合い入れすぎじゃない? と、オルシュファンの部屋を訪ねた少年は、まず最初にそう漏らした。エレゼンサイズのクリスマスツリーは、ララフェルからしたら大木と言っていいほどの大きさだし、部屋中に飾り付けられたガーランドと電球はキラキラと輝いている。これをオルシュファンが一人でせっせと準備したかと思うと、暢気にお呼ばれしただけの自分が、ちょっと情けなくなった。店から自分の小遣いで食材とケーキを買って来てはいるのだが、それにしても、である。しかし、オルシュファンはにっこり笑って、友と初めて過ごすクリスマスだからな、これくらいしなくては、と意気込んでいたが、これだけの物を揃えるのに、きっと安くない金額がかかっているはずだ。自分は学生、オルシュファンは社会人とはいえ、ちょっと気が引けた。
    「ツリーの飾り付けは一緒にやろうと思ってな、ほら」
    「おおう……すごいたくさん……」
     テーブルの上に広げられたオーナメントの数々もまたカラフル、かつきらびやかで、目がぐるぐるしてくる。少年は、小さな――あくまでエレゼンにしては、だが――サンタクロースの人形を両手に取った。店の飾り付けの手伝いで手一杯で、家の飾り付けなんてしたことなかったな……。そう思うと、せっかくだから楽しもう、という気持ちになってくる。
    「届かないところは手伝ってね」
    「任せておけ」
     頼もしい返事だ。少年は腕いっぱいにオーナメントを抱えて、クリスマスツリーのそばに置かれたステップに飛び乗った。

     ふわふわの綿をところどころに乗せて、きらきら光るオーナメントを吊るして、サンタや杖の飾りを引っ掛けて。そうして飾り付けたクリスマスツリーは、オルシュファンに抱っこされた少年が最後にてっぺんに星を差して完成した。すごいすごい、と喜んでいるのを見ると、奮発した甲斐もあったというものだ。無邪気に笑う恋人の姿を見ると、胸にきゅうっとこみ上げるものがある。勢いに任せ、オルシュファンは少年を抱っこしたまま、頬にキスをした。
    「楽しかったか?」
    「うん、ありがとね。色々準備してくれて」
    「これくらいなんということはないさ」
    「そうかなあ……」
     オルシュファンとしては、普段はわりとクールな恋人が、年齢と見た目相応に楽しんでいる姿を見られたのは嬉しかったし、十分以上の価値があったと思っているが、本人としては、ただ楽しんだだけのようで、気が引けているのだろう。しかし、クリスマスとは、ツリーを飾り付けるだけの日にあらず。これからまだまだやることがあるのだ。
    「さあ、次は食事の準備をしよう! 手伝ってもらえるか?」
    「もちろん。なんでもするよ」
     元気な返事に、うんうんと頷いて、オルシュファンは少年を抱えたまま、キッチンへと向かった。

    「ふう……めちゃくちゃ食べたね……」
    「そうだな……明日から筋トレを倍にしなくてはな……」
     たくさんのごちそうは美味しかったけれど、その言葉を聞くに、きっとオルシュファンの中では、今日はチートデイ扱いなのだろう。たまにはそういうのを忘れて欲しい気もしたが、まあ、それはそれとして。一緒に夕飯の支度をして、きらきらのツリーの傍で豪勢な食卓を囲んで、ケーキを食べて、とくれば、最後に残っているのはプレゼントである。こんなに準備をしてくれたとは思わず、このプレゼントがそれに見合ったものになっているかはわからなかったが、渡さない訳にもいかない。少年は小さな小箱を取り出して、オルシュファンにそっと差し出した。
    「……これ、プレゼント。色々準備してくれてありがとね」
     差し出された小箱を受け取る。重くはない。開けても良いか尋ねると、少年はこくりと頷いた。そっと箱を開けると、そこには、小さな銀の指輪が輝いていた。今はまだあんまり立派なものは作れないけど、受け取ってもらえると嬉しい――ということは、つまり、年末の忙しい時期に、これを自分で作ってくれたのだということで――。
    「ありがとう友よ……嬉しいぞ……! 家宝にする、絶対だ」
    「いや、大げさな……来年はもうちょっと出来が良いのをプレゼントしたいし……普通につけてくれた方が嬉しいかな……」
     オルシュファンは涙目になって喜んでくれているが、まだ見習い彫金師の手前、家宝にされるとまで言われると恥ずかしい。
    「ううむ……仕方ない、ならば大事につけさせてもらうとしよう」
    「うん、そうして……」
    「それに、来年も期待して良いと言うことだしな!」
    「なんだかハードル上げちゃったかなあ……」
     今はまだ彫金師ギルドの見習いだけれど、高校を卒業したら、ギルドの正式な彫金師になる予定だ。そうなってからも、毎年オルシュファンに指輪を贈りたい。年々、もっと立派なものを。そして大人になったら――。
    「ところで、これはどの指に合わせたものかな」
    「あ……」
     オルシュファンはわかっていそうな顔で少年に尋ねた。もちろん、左手の薬指に合わせたものだ。けれど、考えてみれば、まだ高校生の自分が求婚というのも気が早い。でも今更別の指につけろとも言えない。どうしよう。照れくささと告白したさがないまぜになり、少年の目がぐるぐるしてくる。そして、何がなんだかわからないまま、返事を先送りにする言葉を口にした。
    「……あ、あとで、ベッドの上で教えてあげる」
     なんだかとてつもなくキザな答えになってしまい、少年は照れ隠しにひょいと椅子から下りて、そそくさとお手洗いに行ってしまった。可愛らしいプロポーズを聞けると思っていたオルシュファンの顔は、みるみるうちに真っ赤になり、誰も見ていないのに顔を覆った。どこであんな口説き文句を覚えてきたのか……。彼が戻ってきた時、どんな顔をすれば良いのかわからない。
     オルシュファンは飲みかけになっていたワインをぐい、と飲み干して、まずは、顔が赤いことの言い訳を作ることにした。これから、こちらもプレゼントを渡さねばならないのだ。赤い顔をして、というのも締まらないが、出来る限り格好をつけて、プレゼントを渡したい。何しろ、彼に贈ろうとしているものは、彼からもらったものと同じく、相手の左手の薬指に合うサイズの指輪だからだ。
     ぱたぱたと近づく小さな足音。ふう、と気合いを入れて、オルシュファンは包みから小さな箱を取り出した。

    おしまい
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