49【完成】「さあマスタァ、ここから一本取って下され」
マイルームに戻るなり黒っぽい細棒を突き出され、藤丸立香は目を白黒させた。彼女の驚愕を愉しげに見守りながら、マイルームに待機していた蘆屋道満は唇をさらに引き上げて微笑みつつ宣う。
「一本で十分ですぞ。昨今は二本取る流派もあると聞き及んでおりますが、拙僧一本取りのすたいるなれば!」
何を言っているのか分からない。立香は口を開きかけ、疑問を放つ直前で止めた。
アルターエゴ・蘆屋道満は酷くひねくれたサーヴァントだ。直接疑問をぶつけても、のらくらと躱されてしまう。彼とまともに問答するにはコツがあると立香は学習済みだった。
道満の差し出す細棒に視線を落とす。
一見黒いが茶褐色にも見える棒が数十本、長さは大体どれも同じ。持ち手がやたらと大きいので小さく見えるが、30cmは優に超えるだろう。装飾のないシンプルな形状は小学生時代、図工で使った竹ひごを思い起こさせた。道満はそれを扇形に広げるようにして持っている。
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