祖父と孫と猫「なぁ、京太郎。おめぇもうすぐ十二歳の誕生日だろう?何か欲しい物はねぇのか?」
祖父が三時のおやつに、と近所で買ってきたであろうどら焼きとお茶の注がれた湯呑みをテーブルに並べながらそんなことを言ってきた。
「………………別に、要らないよ」
本心だ。
欲しいものがない……というか、分からない。今流行りのゲームだとか、漫画だとか。それらを適当に言っておけばいいのだろうが、如何せん興味が無い。興味の無い物を渡されたところで大事になど出来るとは思えないし、何よりじいちゃんに失礼だと思った。
「……………………そうかい」
くるりと背を向けた祖父。少しだけその背中が寂しそうに見えた。
途端に己の中に罪悪感が募る。
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