拓カルSS あれは――多分、中学に上がったばかりの時だったと思う。短パン履いて走り回っていた小僧が、学ランに着られる時期。ランドセルを背負っていた女の子が、セーラー服を纏った少女に変わった頃。……小学校ではみんなで仲良く遊びましょうという方針だったのに、ただ進学しただけで男子と女子の間に見えない壁が出来てしまう、急激な変化にオレがショックを受けた際の出来事だった。
カルアとは同じクラスだったが、なんとなく話しかけにくい空気があって、学校でのオレたちは少々疎遠になっていた。女子は露骨に男子と距離を置いていたし、男子の中でも、女子とつるまない方がかっこいい、なんて暗黙の了解がまかり通ってしまっている。
そんな急激な変化に、ただ中学に進んだだけだと思っていたオレは狼狽した。オレは何も変わらないのに。カルアとオレの関係も変わらない筈なのに。それなのに、周囲がそうさせてはくれない気がして、恐ろしかった。今日の夕飯の話とか、今度の休日の予定とか、そういう話をカルアとしたかったのに、教室の中で切り出すのは悪いことのように思えていた。
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