「贄の鼓動」 つぷり、と皮膚が裂ける音がした。
未だかつてこんなにも気分が高揚したことがあっただろうか。
敵を叩きのめした時、上等な食事にありつけた時、ヒースクリフから賞賛を受けた時、どれも言葉にし難い喜びを伴い、今後の糧になったが〝今〟そのものを奮い立たせるものではなかった。
◇
ヒースクリフ・ブランシェットがヴァンパイアであることは城一番の特秘事項である。
ヒースクリフがどうしてヴァンパイアになってしまったかはオレも知らない。誰かに襲われたのか、自ら命を絶ったのか……、猫に死体を跨られるとなるって噂もある。とは言っても、目は赤く変色していないので、まだ完全体ではないのかもしれない。なんにせよ、楽しい話ではないだろう。
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