オメガバ太中中也さんが出ませんが太中だと言い張ります。
ほのぼのポートマフィア☆
その人物が歩くと、まるでかの有名なモーゼの十戒を彷彿とさせるように人々が割れ、彼の正面に道を作り上げた。
黒いスーツと白いシャツに身を包んだ人々が、廊下の壁に貼り付かんばかりに移動する様は異様なものであるが、誰だって自分の命は惜しいのだ。
触らぬ神に祟りなし――居合わせた人々が脳裏に思い浮かべた言葉が表す通り、私は今不機嫌ですといった様子を隠すことなく、平素とは違う大きな歩幅で廊下を突き進むのは一人の痩身な青年――太宰治。一〇代にして横浜の裏社会を牛耳るポートマフィアの幹部に名を連ねた、異例まみれの人物である。
「…………」
そんな太宰が不機嫌であることは、そう珍しいことではなかった。
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