星新一 『暑さ』パロ 善逸が炭治郎の元を訪れたのは、蒸し暑い夏の日だった。
「久しぶり、炭治郎」
「突然どうしたんだ、善逸」
善逸は力なく、ふらふらと手を振って、それから頭をかいた。
「あのさ、炭治郎。俺のこと……警察に通報してくれないか」
「な、何を言うんだ善逸。何かしてしまったのか!?」
「いや、まだ何もしてないんだ」
「じゃあ、何か犯罪に巻き込まれそうになっているとか……」
善逸は首を振る。
「そういうんじゃないんだ。ただ……ほら、最近暑いだろ。今にもおかしくなって、何かしてしまいそうで」
「なんだ、そういうことか。それじゃあ警察は呼べないな」
炭治郎は安心したように笑ったが、善逸の表情は晴れない。
「……ちょうど一年前のこんな暑い日にさ、俺、殺しちゃったんだ」
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