体育祭
書きたい所だけ書いたのでよく分からない感じになってますがすみません…
体育祭の零涯です
涯くんは零くんの後輩設定
「涯くん!」
眩しい笑顔で宇海さんがこちらへ向かって走ってくる。ただでさえその端正な顔立ちで普段から目立っているというのに、イベントマジックにより、学年を問わず周囲を歩く人々の視線は更に彼に集中していた。
「オレ、今借り物競争出ててさ」
息を整えながら、宇海さんが話しかけてくる。汗が光を反射して眩しい。
「はぁ」
周りの視線が集まってる事が少し気になりつつも、いつものように相槌を打つ。
「涯くんが借り物のお題にぴったりだからさ!一緒に走ってくれないか?」
「…いいですよ」
体育祭など正直興味が無い。出来れば他人とできるだけ関わらずこのイベントを終えたい、競技に出て注目を浴びるなんてもってのほかだ、そう思っている。しかし宇海さんがもしお題に沿った人を他に見つけられなかったら気の毒だと思ってそう答えた。
「あ、ホント?!ありがとう!」
宇海さんはオレがすぐに同行を承諾したことに一瞬驚いたようだったが、すぐにオレの手を取り走り出した。思ったより大きい宇海さんの手に少し驚く。オレは走りには自信がある方だったが、宇海さんの方がオレより少しばかり早い。足の長さの差か…なんて考えながらオレは手を引かれながら宇海さんの半歩うしろを走る。それにしても、オレがぴったりのお題なんて…。後輩、ふてぶてしいやつ、顔に火傷跡のあるやつ…いや、そんなお題なんかあるわけないだろ。宇海さんにお題は何なのか聞こうか。そう思って顔を上げた時、
「ハハ!断られたらどうしようかと思ってたから良かったよ!」
宇海さんが振り向き、話しかけてきた。
「断りませんよ。」
宇海さんの目が少し開き、俺の手を握る手が緩んだ。
「そ、そうか…。」
宇海さんは前に顔を戻してしまう。襟首に汗が伝っている。
「な、なんかさ、涯くん、こういうの苦手そうだから…一緒に走ってくれてスゲー嬉しいよ。」
いつもと違う、緊張した声だ。
オレは宇海さんから目が離せなくなっていた。体が妙に暑い。揺れる髪も、流れる汗も、その全てがまるでスローモーションみたいに見えて、奇怪な気持ちになる。宇海さん、どんな顔してそんな台詞を言ってるんだよ。なぁ、振り向いてくれよ。オレはできる限り早く足を回転する。でも、どうしても宇海さんに半歩、届かないんだ。白色のテープが、どんどん近づいてくる。なんだ、もうゴールなのか。体育祭なんて、早く終われと思っていたのに。終わるな、終わるな、ゴールするな。どうかこのままずっと宇海さんと一緒に走っていたい。
わぁーっっ!!っと歓声があがる。
「1着、2-○組!」
ゴール、したのか。
「はい、じゃあちゃんとお題に沿ったものを借りているかチェックするので、お題の紙を見せてくださいね」
「ああ、ハイ、どうぞ。」
宇海さんが係の人に紙切れを渡した。
「え、ああ〜…?なるほど。えっと、零くん、この子で間違いないんだね?」
なにやら係の人が曇った表情で交互に俺たちに視線をやる。
「間違い無いですよ」
宇海さんはいつもの笑顔で答えた。
「はい、じゃあ大丈夫ですよ。じゃあ自分のクラスにもどってね〜」
宇海さんは頷くと、紙切れをハーフパンツのポケットの中にぐしゃりと入れた。
「それじゃ涯くん、ほんとにありがとう!」宇海さんは俺の手を握り、笑顔を向ける。
「零ー!!」
「あっ、ごめん、呼ばれたみたいだ…!じゃあ…」
オレに背を向けた宇海さんを見て、思いがけず宇海さんの腕を掴んで引き止めてしまった。
「うおっ…!涯くん?どうかした?」
「あ…」
まずい…。何か引き止めたかったから…なんて、そんな事を言われたら不気味に思うだろう。いや、宇海さんは分からないな…。
「そう言えば、結局お題はなんだったんですか?オレにぴったりとか…」
オレは咄嗟に走っている最中に気になった事を聞いてみた。すると宇海さんは少し赤くなって困ったように笑った。
「ハハハ、、秘密さ!」
「秘密って…。」
「まあまあ!それじゃあ!!」
宇海さんは逃げるように走っていってしまった。なんか、不完全燃焼だ…。オレは少しため息をつき、下に目線をやる。
「…?」
だいすきなひと
グラウンドの上のぐしゃぐしゃの紙。オレは激しく鳴り始めた鼓動をどう止めればいいのか分からなかった。
おしまい