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    xxzakiraxxz

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    どんな気持ちになっても責任はとりません

    公式二次創作海洋生物のUTAU話自音源公式二次創作

    発端は「チガヤ リョウ」の父が連れてきた生命体だった。ピンクと白の不定形のそれは、人の真似をするように変形し、交流を深めようとしていた。
    最初は優しい研究だった。この生き物が完全に相手に模倣出来るのなら医学の発展へと繋がる。しかし、その模倣にはその相手を食さなければならない事が判明した。
    食しさえすれば、どんな物にでもなれる存在。不死身で、攻撃の効かない、不死の存在。
    それは生物兵器として使うにはあまりにも有効だった。

    チガヤは金に飢えていた。研究が思うように行かず、男一人で息子を育て上げるのも厳しかった。
    チガヤリョウもそれは充分に理解していた。聡明な息子は父の邪魔はしなかった。それが余計に、彼の凶行に拍車をかけた。
    戦争は儲かるのだ。尤も、戦火に居なければの話だが。
    チガヤがやり始めたのは、その不定形の生命体の細胞を生物に移植し、生物兵器と改造する事だった。
    その細胞は、異種の細胞ともよく馴染んだ。潤滑油のようなそれは、決して交わることのない生き物同士を結びつけるのにうってつけだった。

    最初の被験者は小鳥だった。数本の羽が生えた程度で終わったが、喉にまで生えた事で呼吸困難になり死亡した。
    次の被験者は蝉だった。羽が生え、手足が細長くなり、大きな声で泣いたかと思うと、絶命した。
    そうやってどんどん重ねていくうちに、海洋生物が非常に馴染む事が判明した。
    この生命体が海から来た物だからなのか、命の根源は海から生まれたからなのか、それは今となっては定かではない。

    話は変わり、チガヤリョウには母代わりの存在が居た。研究所で働く研究員夫婦の一人娘「カリヤ ココネ」という、彼より少し年上の女性だった。
    カリヤココネは、体が弱く、学校にもまともに通う事が出来ず、心配した両親が研究所に連れてきていた。彼女は家事が得意で、チガヤリョウは彼女に任せていた。
    その代わり、二人はたくさんの話をした。
    研究の事、生命体の事、話す為に調べて、非人道的なものだと判明して、二人は大きく決裂した。
    「これは人類の到達点だ。これは全てを救う研究だ」とチガヤリョウは語った。
    「これは人類の汚点だ。こんなものは誰も救えない」とカリヤココネは語った。
    完全に決裂したまま、二人は大人になった。

    大人になったカリヤココネは、生まれた生物兵器達の面倒を率先して見ていた。
    大人になったチガヤリョウは、生命体を使い、どんどん生物兵器を生み出した。
    チガヤリョウは、色んな所から子供を拾ってきては、非人道的な実験を繰り返した。

    「イルマ フジ」という少年は、研究所近くに捨てられていた孤児であり、発見された時には虫の息だった。
    五歳の少年が持っていた手紙には、名前と、この子をよろしく頼むという身勝手な文章だけがあり、少年の体には幾つもの虐待の跡があった。
    チガヤリョウは少年を拾い、延命処置を施したが、少年の心臓は止まった。止まったのなら好都合と言わんばかりに、彼は生命体を使い、彼とクジラを掛け合わせる事に決めた。
    イルマフジが目覚めると、独房だった。驚く間もなく、全身が引き裂かれるような痛みに襲われる。悶え苦しむ中、幼かった自分の体が急激に成長をしているのが見えた。
    全身が引き伸ばされ、背中が切り裂かれたように痛み、体が変異していくのを五歳の少年が受け入れきれるはずもなく、それでも彼は死ぬことは許されなかった。
    朦朧とする意識の中、部屋に入ってきたチガヤリョウが告げたのは「失敗作だな」の一言だった。

    「オリベ マドカ」は至って健康な青年だった。
    二十歳の誕生日を目前に浮かれていた彼は、飲酒運転の車に轢き殺された。
    彼には家族らしい家族は居なかったせいで、無縁仏とされるその遺体を、チガヤリョウは引き取り、サメと組み合わせ始めた。
    オリベマドカが目覚めると、ベッドの上に拘束されていた。周りを見渡せば手術室のような空間だ。酷く頭が痛く、記憶が朧気だった。
    見下ろしたチガヤリョウが呟いた。
    「回復力は成功だが…足りないな、失敗だ」
    オリベマドカはどうにか抜け出そうと暴れたが、ビクともしない。そうして暴れる中、隣のベッドの少女に目を奪われた。

    「ワタナベ イタミ」は生まれてすぐに孤児院に預けられた身寄りのない少女だった。
    名前も孤児院の院長につけてもらったもので、彼女はそれもあまり気に入ってはいなかった。院長は何かとつけて文句を言い、彼女に辛く当たっていた。
    そんな生活に光が刺した気がした。チガヤリョウは彼女を引き取った。けれど、それは研究の為だった。
    生きたままペンギンと同化させられた彼女は、激しい飢餓感に襲われた。食べたくて食べたくて仕方ない。その飢餓感を抑えるために何度も実験を施されたが、治ることは無かった。
    「攻撃性は成功なんだがな。…君達が合体すれば完璧なのに」
    生きたままの彼女は死なぬようにと常に実験室に縛られていた。虚ろな彼女の目は、隣の青年を映したのかもしれない。

    「ヒナ」と「ウリ」は、研究所で生まれた研究員の子供だった。
    チガヤリョウを兄と慕い、普通の子のように育っていたが、ある時ウリは行ってはならないと言われていた生命体の部屋へと侵入してしまった。
    生命体はその時、たまたま気が立っていた。ウリを丸々と呑み込んでしまい、吐き出された頃には体は溶けて絶命をしていた。
    それを見つけたチシリョウは、生命体の細胞が残るうちに珊瑚と掛け合わせることに決めた。今までのような生物ではないものと掛け合わせたらどうなるのかを知りたかった。
    結果は…ゾンビと言った方が正しいだろう。思考能力も落ち、動きも最低限となったウリはぼんやりと見上げるばかりだった。
    それを知ったヒナは、チガヤリョウへと持ちかけた。
    「私も同じにして」
    そうして彼女は生きたままタコと組み合わせられ、それを受け入れた。兄のため、弟のため。私は一人ぼっちは嫌だから、そういうヒナに、チガヤリョウは薄らと微笑みかけるだけだった。

    チガヤリョウが非人道的な行いを繰り返す中、カリヤココネは、生まれてしまった生物兵器達の世話に奔走していた。
    痛みに苦しみ、泣き叫ぶイルマフジを撫でてやり、抱きしめてやり、よく眠れるようにと子守唄を歌った。
    オリベマドカとワタナベイタミが仲が良いことを知り、二人を同じ空間に置くように指示し、話し相手になった。
    あまり動かなくなったウリの身の回りの世話を焼き、ヒナにそれを真似して覚えるようにと色々な事を教えた。
    そして、生命体とも、対話を続けた。

    人の言葉を話さない生命体…製造番号:0001は、彼女の言葉を最初は理解していなかった。
    時には攻撃を、時には興味を。そうして行くうちに、0001は、彼女の真似をするようになった。
    声を、言葉を、行動を、姿を。一つ一つ真似をする度に彼女が笑う。
    彼女は0001に歌を教えた。0001も真似して歌う。
    そうして、少しずつ成長させていく中。

    カリヤココネは、何者かに襲われ、何者かの子供を孕んだ。
    徐々に大きくなる腹に、彼女は何度も堕胎を望んだ。しかし、チガヤリョウがそれを許さなかった。
    「それは望まない子なのだろう?じゃあ構わないだろ。やりたかったんだ、産まれたての子とはどう適合するのか、気になるじゃないか」
    カリヤココネは拘束され、産むまで管理された。
    そうして生まれた幼い女の子は、チガヤリョウが取り上げた。

    ウミウシと掛け合わされた女の子は、急成長を遂げた。回復力、残虐性、防御、不死であり、死ぬ事の無い生命体が、遂に生まれてしまった。
    成功作が生まれてしまったことを知ったカリヤココネは、産後でボロボロのまま、0001の部屋へと向かう。
    彼女の姿を真似て、彼女の声をした0001は、嬉しそうに彼女を迎えた。
    頭を撫でて、そして呟いた。

    「ねえ、お願い。私を食べて、全部壊して」
    「もっと、もっとあなたに色んな事を教えてあげたかった。でも、私にはもう出来ない、耐えられない」
    「全部止めて、壊して、……食べていいよ、なんでも」
    「残さず、食べてね」





    0001は、初めて外に出た。真似では無い体で、知らない知識と知った知識を掛け合わせて、言われた通りに、人を食べた。
    道中、自分の部屋と同じような部屋があったから開け放った。殆どが動けなかったけど、何体かは動けたようで、各々逃げ回っていた。
    クジラの少年は、0001の姿を見て最初は理解出来なかった。言われるがままに手を引かれ、ついて行った。
    サメの青年とペンギンの少女は、最初は悩んだ。けれど、その声が自分達と会話をしてくれた彼女に似ていた気がしたから、ついて行った。
    ウミウシの少女は一目見て理解した。これが私の本体で、成すべき姿で、あるべき姿だと。だからこそ、0001について行くことにした。

    異常事態を察したチガヤリョウは、ヒナに告げた。
    「俺も実験体になろう。お前は見ていたから、出来るね?」
    ヒナは頷いて、チガヤリョウをシャチと組み合わせた。成功作なのか失敗作なのかは、彼女には判別は出来なかった。

    こうして呆気なく、研究所は滅んだ。
    人間は一人も居なくなった。代わりに、化け物が八体、残った。

    0001がカリヤココネだと気付いたクジラの少年は、どうして自分に言わなかったんだと、苦しんだ。あんなに好きだったのに、あんなにあなたの為になりたかったのに、何も信じられない、と。
    ウミウシの少女は喜んだ。これから人間を沢山殺して、母との約束が果たせると。
    ペンギンの少女は嘆いた。でも、同じ境遇の者が居るのだからまだどうにかなる。苦しいのは自分だけでは無いと。
    サメの青年はよく分からなかった。けれど、化け物がこんなに入れば何も怖いものは無いとは理解していた。
    サンゴの少年は何も思えない。存在するだけ、息が詰まるような時間を、ただ無限に過ごすだけ。
    タコの少女はそれも真似た。皆が生きやすいように、過ごしやすいように、それぞれを少しづつ真似をした。
    シャチになった男は愉しげに笑う。まるで猛毒のようなこの男は、遂には自分すらも実験体とし、同じ目線で彼らを見ている。

    ……天使のような彼女を食べた化け物は、今はもう、彼女がどうして人を殺して欲しかったのか覚えていない。
    それでも、彼女が歌った歌を覚えている。笑った顔を覚えている。

    だから、カッコカリは、自由に生きる事を決めた。
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