ごはんを食べよう12 ぷつ、と小気味よく歯で噛み切れる海老は甘く、味わっているのにもう食べ終わってしまった。
「美味しかったね、ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした」
イライもそうなのだろう。
美味しかったと笑うその目には満足げな色が宿っている。
「イライ、これからどうしますか?」
「どう?」
「何か、買いたいものとか。あれば付き合います」
「うーん……、食材はさっき買ったし……あ!ホットケーキミックスが余ってたよね」
「ええ、少しですが」
「マグカップで作るカップケーキ、あれが食べたいな。イソップくんが前に作ってくれた……」
イライが言っているのは、イソップが以前にインターネットで見つけたレシピで作ったカップケーキのことだろう。
たしかに、あれは手間の割に美味しかった。
「材料はありますし、それならこのまま帰りましょうか」
「うん。楽しみだなあ、今日は美味しいがいっぱいだ」
そう笑うイライに見惚れて、イソップはイライに手を伸ばした。繋ぎたくてそうしたのだけれど、触れる直前でグッと握りしめる。
──ところが、その手を掬い上げるように掴まれて、イソップは目を瞬いた。
「、イライ」
「せっかくだし、こうして帰ろうよ」
「……はい」
繋いだ手は、もう、あの荘園にいたときのような手袋越しではない。温かくて、緊張からか、少し汗ばんでいる。
イライが、イソップをどう思っているのかはわからない。けれど、今こうしているという事実は、本当に、ほんとうに、幸せなことだった。