かりのやどり未来のファと盗賊団をやめた頃の若ネがのんびり同居前編
ネファよりネ+ファに近いです
なんでも許せる方向けです
ハッピーエンドです
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ごうと雪混じりの冷たい風が吹き抜けて、古びた外套の裾を揺らす。突き刺すような寒さに、ネロは箒の上で体を縮こまらせた。
中央や西では春とよばれる今の時期、北の大地はあい変わらず分厚い雪で覆われている。そも、ネロの住まうこの国に四季の概念は存在しない。生まれてから今まで、両手で数えるほどしか、雪が降らない日を見たことはなかった。白い吐息のもやが、夕方の空と遠くの山々に向かってとけていく。
ネロがこうして雪の中を飛んでいるのは、食糧調達のためだった。魔法使いとて、飲まず食わずでは生きていくことはできない。レインディアーの子供かうさぎあたり、食い出は少ないが野鳥でもいいだろう。とにかく食材を求めて小一時間、住処の周りを飛び回って生き物の影を探している。この時期は山菜や木の実など、山の実りにはまるで期待ができない。山芋くらいならもしかしたら残っているかもしれないが、ここよりさらに雪深い山に分け入って地面を掘るのは、体力も使うし、できれば最後の手段にしたかった。もっというとこの地域の芋は毒があるものやエグみの強いものが多く、腹にはたまるが大抵あまり美味しくないのだ。そろそろそんな文句を言っている場合でもないけれど。
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