ねがいごと「あれ?いつものねがいごとと違うじゃねぇか」
ダイの手元にある短冊を覗き込みながら、ポップが首を傾げた。
「もう、見ちゃだめだって毎年言ってるのに」
ねがいごとは、ひとに知られると叶わなくなってしまう。一体誰に吹き込まれたものか、ダイは幼い頃からそう信じているらしかった。ダイが自分の書いた短冊を誰にも見せまいとするのは毎年のこと。そして、その大切なねがいごとがいつの間にか家族全員に知れ渡ってしまうのもまた、毎年のことだった。
「いいだろ、どうせ飾ったら見えちまうんだし。それよりおまえ、いつものねがいごとはどうしたんだよ。もしかして諦めたのか?」
「……ちがうよ」
からかうような口調が気に障ったのか、子どもらしい丸みをわずかに残した頬がぷくりと膨らんだ。
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