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    datdatte

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    datdatte

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    卒業してプロヒになった幼馴染を切島君視点で。
    原作軸ですが添いではありません。デク君がそのままプロヒーローになる世界線の、何かが起きてるのか起きてないのか、何気ないお話。

    どこからでも どこへまでも大方の予想を裏切って、爆豪は雄英卒業後の進路を海外に決めた。そして、反対に緑谷は日本国内に拠点を置くのだという。

    「てっきり、オールマイトが留学したみたいに緑谷が海外に出るんだと思ってた」

    とは、元級友たちの一致した言で、俺もそう言った。



    高い天井と広い空間に大勢の発する音が広がっていく。それぞれ目的を異にしている筈なのに、何故か不思議と調和しているように感じていた。気分が浮き足立っている証拠かもしれない。
    「それじゃ、気ぃつけてな!」
    自分の浮き足立つ気持ちを誤魔化すように肩を勢いよく叩くと、振り向いた爆豪は眉を片方だけきゅ、跳ね上げる。
    「いってえな、クソ髪」
    今はもう滅多にしない呼び方を敢えてする、その表情はいたずらっ子のようだった。爆豪は俺から視線を横にずらして、「ハ、」と短く笑い声をこぼす。
    「いい加減泣きやめや、アホ面」
    「だって、ばくごぉぉぉ、」
    上鳴は涙をぼたぼた零しながら鼻を思い切り啜り上げる。
    それを見た爆豪は「きったねえ」と笑って上鳴に軽く膝を入れる。
    ぐええ、と鳴き声だか悲鳴だかを上げる上鳴を更に隣の瀬呂が「あーあ」とため息をついて見やってから、爆豪の方へ視線を向ける。
    「暴れてこい」
    「言われんでも」
    瀬呂が差し出す拳に、爆豪の方もごちんと合わせて、俺たちの後ろに並ぶ元級友たちの方へ視線を投げかけた。
    「ぞろぞろぞろぞろ見送りとか、暇か、てめえらは」
    「何を言う。みんな、君のために時間を割いて……いや、まあ、そうだな、特に連絡した訳でもないのに全員集合したしな」
    飯田が苦笑しながら周りの元級友たちを見回す。
    「爆豪君。あちらでの活躍、期待している」
    そう言って差し出された手を、爆豪はばちん、と音を立てて握り大きく振る。
    「おー」
    他のメンツからの言葉にも一通り受け答えを済ませてから、「行くわ」と爆豪は背を向けた。そのまままっすぐゲートを目指して歩き出す。その、しゃん、と伸びた背中を目にすると、改めて俺の胸の中に熱いものが込み上げてきた。
    もう一度、最後に声をかけようと息を吸い込んだ時。
    「かっちゃん!」
    俺よりも一瞬早く緑谷が爆豪の名前を呼んだ。
    爆豪は足を止めかけたが、振り返りもせずに歩き続ける。
    こちらに、緑谷に背を向けたまま、だけど右腕が、す、と伸ばされる。
    拳を高々と掲げ、そこからさらに人差し指が伸びて最初の数字の形になる。あるいは、「上」だったのかも。爆豪のことだからその両方か。
    「うん! 君を見てるよ!! 僕も頑張るから!!」
    緑谷は叫んでから、ぐ、と拳をその背中に向け、爆豪がゲートの中に消える前にくるりと体を反転させた。そのまま空港の出口へ足を進める。
    俺の元級友、幼馴染同士のふたりはさっぱりとして、だけどやる気に満ち溢れたとてもよく似た空気を身に纏っていた。
    爆豪が日本を出て最初の冬。
    下半期の北米ヒーローランキングトップ30にその名前が初登場する。ルーキーの海外勢としてはオールマイトに次ぐ快挙。日本でもそれが大きく報じられて俺も負けてらんねぇとやる気が燃える。
    国内のランキングには見知った名前も多くあって、そしてその筆頭には緑谷の名前。まだ誰もシングルランキングには食い込めていないけれど、みんな順調なスタートを切れたと思う、そんな一年目だった。

    緑谷が現場から病院へ緊急搬送されたのは、三年目の春先だった。
    学生時代のあの大きな戦いを経て緑谷は、無闇に突っ走ることこそなくなったもののやっぱり頭よりも体が先に動く癖というか反射はあって、今回の怪我もそれが原因だった。
    そのことについて一部心ない批判もあったけれど、俺は助けを求める人が目の前にいたときに何を思うよりも先にまず一歩踏み出せる、そんな緑谷の学生時代から変わらない姿に懐かしさと、強さと、暖かさを感じた。
    「でも、やっぱりこうして怪我して活動できなくなるのはね……」
    眉を下げて、病院の白いベッドの上で苦笑いを浮かべた緑谷は、どこか少し寂しそうに見えた。
    ギプスと包帯だらけのその両手の中には、海外のヒーロー情報を伝える雑誌。ちょうど開かれていたページは爆豪の特集。
    緑谷は俺の目線に気付いて、「やっぱりかっちゃんはすごいよね!」と何かを振り払うように呟いた。
    「爆豪からなんか連絡とかねえのか?」
    俺が尋ねると、緑谷は肩をちょっと竦めた。
    「あったよ。僕が入院したその日の夜に。怪我のこと知らせた訳でも、普段からやり取りしてる訳でもないのに、こういうときのかっちゃんの引きの良さって凄まじいよね」
    緑谷は俺から手元の雑誌に視線を落として、辛うじてのぞいている指先で、爆豪の写真をそっと撫でた。
    「今病院だって言ったら、鼻で笑われちゃった…」
    緑谷は「中々追いつけないや」と呟いて、もう一度爆豪の写真を撫でた。
    その横顔に何か言葉をかけなければ、と思いつつも気の利いたことが浮かばずにただ口を開こうとした瞬間だった。
    背後で病室のドアがすらっ、と静かに、しかし信じられないくらいの速度で開いた。
    驚いて振り返ったら、ここにはいない筈の人間がひとり。

    「……か、」

    ちゃん、と恐らくは続くはずだった緑谷の声が震えた理由は驚きだけじゃなかっただろう。
    爆豪は緑谷を見て、俺を見て、もう一度緑谷に視線を戻した。それから「ハ、」と極短い笑い声を発する。
    後には妙な沈黙と緊張感が病室の中に落ちてきて、久しぶりに旧友に会った喜びや驚きを感じるよりも先に、俺は落ち着かない気持ちになる。その空気を破るように、「じゃ、じゃあまたな!」と言ってそそくさとその場を離れることにする。
    病室の入り口で爆豪とすれ違う時、元級友の額に汗が滲んでいたことを俺は見てしまって、背中がなんだかちりちりした。

    その日の夜、そろそろ寝るかという時間になって俺のケータイが鳴った。見れば、爆豪の名前。ちょっと緊張しながら応答する。
    「おー、どうした?」
    『明日、XXホテル。8時な』
    「……は? え?」
    『寝る』
    その言葉を最後に通話は一方的に打ち切られた。

    「俺が非番じゃなかったらどうするつもりだったんだよ…」
    ホテルの正面に回した、俺の愛車の助手席に乗り込んだ爆豪にボヤく。
    「てめえのスケジュールくらい把握しとるわ」
    いやそっちの方がなんでだよ、という言葉は辛うじて飲み込んだ。湾岸線を指定された通り空港に向けて走らせる。
    「もう戻んのか? せっかく帰国したんだからみんなにも会ってけばいいのに」
    前を向いたまま尋ねると、爆豪は欠伸を噛み殺しながら答えた。
    「そもそも予定外なんだよ、今回のは」
    聞くと、本来は北米から欧州のとある国へと出張予定だったのをついでに日本へ立ち寄ったとのことだった。
    「ヘマした奴の面でも拝もうと思っただけだ」
    シートにずるずると深く凭れかかりながらそんなことを言う。

    素直じゃねえなあ、

    という言葉を、再び辛うじて飲み込んだ。それが爆豪が初めて帰国した時の話だ。

    それから更に二年経って、爆豪がとうとう日本に拠点を戻すことになった。しかし入れ替わるように今度は緑谷が海外へ行くのだという。
    「前から考えてたんだ」
    緑谷の目は、光を讃えて力強く遠くを見据えていた。
    「僕も広く色んなものを見て、沢山の人に出会ってくるよ」
    見送りに集まった元級友たちに大きく手を振って、緑谷は明るく旅立っていった。
    空港へ爆豪は来なかった。そのことを指摘すると緑谷は何故か少し照れたような笑顔を浮かべたのが印象的だった。
    これは深く追及しない方がいいのだろう、なんてことを考えつつ俺も空港を後にした。

    元級友の中で一番最初に結婚したのは、峰田だった。なんでも趣味で入った演劇サークルで知り合ったそうで、上鳴あたりが「美人女優?!」と色めき立っていたがお相手は舞台美術が専門の人らしい。披露宴の時に初めて会ったが、笑顔の柔らかい可愛らしい雰囲気の人だった。でも、峰田は「怒らせると怖ぇんだ…」と呟いていたのをよく覚えている。
    仲間内で初めての結婚式ということもあって、当時北米在住だった爆豪含め元A組は全員が出席した。
    緑谷と爆豪は別のテーブルについていて特に懐かしむような素振りを互いに見せていなかったが、披露宴が済んで二次会会場へ移った後、盛り上がる元級友たちの輪から離れ、貸切のホールの隅っこで壁にもたれつつ何やら会話しているふたりの姿を目にした。ふたりの間には人一人分の距離が空いていたが、ふたりとも表情は穏やかで時に笑みこぼしながら和やかにその時間を楽しんでいるのは見てとれた。
    またいくらか時間が経って、元級友達も更に何人か結婚式を挙げて、俺はその度にそうした幼馴染たちの姿を視界の端に捉えていた。
    ふたりの間の距離はいつも人一人分空いていて、それはずっと縮まらずにいた。なんとなくそのことに俺は寂しさを覚えたのだけれども、ふたりの表情が本当に穏やかなので、それがふたりにとっての丁度いい距離感なのかもしれない、とも思った。
    時々、緑谷の病室ですれ違った爆豪の額に光る汗や、名前を最後まで声に出せなかった緑谷の顔を思い出したりもしていたが、それも段々遠く薄くなっていった。

    あれはプロになってから何年目の出来事だっただろう。
    俺は東京の事務所に所属していたが、学生時代にお世話になった関西のファットの事務所にもちょくちょく出向しており、時にはそれが長期に渡ることがある。その日、東京に戻ったのは約二ヶ月ぶりだった。
    少し無理なスケジュールを押して最終便を利用したのがいけなかった。千葉の実家に帰るにしても、都内の自宅に帰るにしてもなんだか面倒だという気持ちになってしまったのだ。それで、爆豪の部屋が空港からのアクセスに比較的容易な場所にあることを思い出した。
    よし、泊めてもらおう、本人に断り無しにそう即決できるくらいには、俺と爆豪は信頼関係が築けている。
    重い荷物を引いて、爆豪が入居しているマンションに到着した。エントランスで爆豪の部屋の番号を入力する。少し待っているとインターホンが通じた。
    『……何時だと思ってやがる』
    いつもより格段に低い声で、それでも律儀に出てくれた爆豪に詫びつつ、事情を話すとハーーー、とバカでかい溜息が聞こえた。それからすぐに住居部分へ通じる自動ドアが開いたので、礼を言って、足を進めた。
    エレベータで移動した先、爆豪の部屋の玄関前で改めて呼び出しのボタンを押すと、すぐに内側からドアが開く。
    「お疲れ様!」
    そう労いの言葉をかけつつ出迎えてくれたのは、海外にいる筈の元クラスメイトだった。
    「緑谷?!」
    なんでここに、という俺の疑問に、緑谷は少し照れ臭そうに肩を竦めた。
    「実は、僕もちょっと前からいさせてもらってるんだ」
    そう言いながら緑谷は俺のスーツケースを軽々と引き受けてくれた。
    「俺はねみぃんだよさっさと済ませろ」と追い立てられながら遅い夕飯やら風呂やら世話になって、やっと人心地ついたのは深夜だった。
    俺が風呂を出ると爆豪は既に寝室に引っ込んだあとで、来客用の布団が二組リビングに敷かれていた。その片方に緑谷は寝転がってモバイルをチェックしている。
    なんとなく緑谷は爆豪と同じ部屋で寝るのだとばかり思っていたので、正直驚いた。その動揺を胸にしまいながら「いつ帰国したんだ?」と尋ねてみる。
    一昨日だよ、まだちょっと時差ボケあってさ、と緑谷は手元のモバイルから顔を上げて返事をした。
    柔らかく温かい光を放つ緑の目と頬の輪郭が高校時代のそれと寸分も違わないように見えて、なんだか胸の奥がふわっと軽くなる。長かった出張の疲れは正直あったけど、今はもう少し緑谷と話がしたいと思った。俺も用意された布団に転がって自分の近況や緑谷のそれなんかを話したり聞いたりした。
    学生時代にこうして緑谷と一対一で話し込んだことって実はあんまり記憶にないのだけれど、それでも話は弾んだし何より穏やかな気持ちになれた。
    俺はクラスメイトたちの結婚式で、隅の方でリラックスした雰囲気で話し込んでるふたりの姿を久しぶりに思い出していた。

    ふと目が覚めると、部屋はもう明るくなっていた。
    隣に延べられていた布団は既に片付けてあって、俺は慌てて携帯を確かめる。寝過ごした、というほどの時間でもなかったのでほっと胸を撫で下ろす。
    リビングにつながっているキッチンの方から何やらカタコトとうるさくは感じない程度の物音がする。それに、食欲を誘ういい匂いも。
    なんとなく、そっと起き上がって気配を窺う。
    キッチンカウンターの向こう側で幼馴染たちは、俺に背を向けた格好で肩を並べて何か作業をしていた。隣り合った肩は触れてしまいそうなくらいに近くて、だけどふたりの背中からは緊張は微塵も感じなくて、とても自然体に見えた。
    不意に、緑谷が横に少しだけ動いて爆豪に肩を軽くぶつけた。その後すぐに、俺からは見えなかったけど爆豪は緑谷に軽く膝蹴りをしたようだった。朝の光の中で戯れあってるふたりの後ろ姿を見ていたら、また胸の奥が暖かくなってきた。ちょっと視界が滲みそうになった時、爆豪が振り返った。
    「切島ァッ、起きたんならちゃっちゃと布団畳んで手伝えや!!」
    「お、おう!」
    慌てて返事をして、俺はあたふたと起き出した。



    それから何年かして緑谷が本格的に帰国し、元クラスメイトの中で一番最初にヒーローを引退した。
    学生時代の無理が祟ったのと、OFAの後継者だったことの影響だった。OFAの残火はとうの昔に消えていたらしいのだが、それでも今この瞬間まで緑谷はヒーローとして第一線で戦ってきた。

    「立場が変わっても、何も変わることなんかないんだ」

    ぽつり、と、引退会見直前の舞台袖で口にした緑谷の顔は、晴れやかだった。
    フラッシュを沢山浴びながらメディアの質問に答えてる姿を俺たち元級友は、同じ会場内で見守っていた。

    「引退後の活動は、」

    と投げかけられた質問に緑谷は、眉を開いて笑顔を浮かべるが少し困ったような表情でもあった。
    「……今はまだ具体的なことは何も。でも、また海外に、世界中を回ろうと思っています」
    緑谷が答えた直後、マイクを通した雑音がスピーカーから聞こえた。何事かと思って辺りを見回すと、いつの間にか爆豪がフロアに出てメディアのひとりからマイクを奪い取ったところだった。

    「てめえはそう言うと思っとった。だから、俺も一緒に行く」

    一斉にざわつき出したメディアと沢山焚かれるフラッシュ。それらを一切無視して爆豪は壇上の緑谷をまっすぐに見つめている。
    「な、何を言ってるんだよかっちゃん! 君はこの国のヒーローとして、」
    「何も変わることはねえんだろ?」
    爆豪が緑谷の言葉を遮る。
    「お前がどこにいたってお前なように、俺もどこにいたって俺だ。だから、俺は俺がいたい場所にいる」
    「……でも、だって……ヒーローは君の夢でもあっただろ……」
    緑谷は壇上でふらふらと、狼狽えながら立ち上がった。
    そんな緑谷を爆豪は見つめ続けている。
    「俺の夢は、もう叶った。でも、新しい夢ができた。これから先、俺ァ、てめえにしてやりたいことが山ほどあんだわ、出久」
    マイクを通して緑谷が息を呑むのが聞こえた。
    「かっちゃん……」
    緑谷の大きな目が、ゆらり、とその表面にあふれた水分で揺れる。それが崩れ落ちるよりも先に、爆豪が持っていたマイクを放り投げて、叫んだ。
    「出久、来い!」
    そして緑谷に右手を差し出す。
    緑谷の肩が一度大きく揺れて、だけどそれから後の動きにはもう迷いはなかった。
    着席していた長机を回り込んで、ステージから飛び降りる。その勢いのまま緑谷は駆け出して、爆豪の右手を掴んだ。そしてふたりは、そのまま走り出して会場を出ていった。
    残されたメディアはあっという間の出来事に対応しきれずに(引退を宣言したとは言え直近までトップクラスのヒーローだった緑谷と、現役トップのヒーローである爆豪の動きについて来られる一般人など早々いるはずもないのだ)呆然とふたりが出ていったホールの扉を見つめていた。そんな中、いち早く堪えきれないというように笑い声を漏らしたのは麗日だった。
    「……爆豪君、大胆すぎるやろ! なんかするんちゃうかなって思ってたけど、まさかこんな形で……あははは!」
    その明るい声に、元旧友たちの顔も綻ぶ。
    「ホント、いつから考えてたんだろ?!」
    「やるなあ、あいつ」
    「アタシちょっと爆豪のこと見直しちゃった」
    「ちょっとかよ!!」
    「千載一遇のチャンスだったという訳か」
    などなど、みんなが思ったことを口にしていた中で、轟が発表をするみたいにす、と手を挙げる。
    「なあ今の、あのふたり、駆け落ちみてぇだったな」
    大真面目な表情でそんなことを言うから元旧友たちの笑い声は更に大きくなった。
    その日のうちに号外が出るのだが、もちろん記事の見出しは『トップヒーロー2人が駆け落ち?!』になることを、その時の俺たちはまだ知らない。
    記者会見は有耶無耶になってしまったので、俺たちもそろそろ解散するか、という時に飯田がぼそり、と呟いた。
    「だが、ふたりとも、とてもいい表情をしていた」
    俺もそれに同意して飯田の肩をどん、と叩く。
    「なあ、これから祝杯上げに行かねえか!」
    飯田は少し驚いたような顔をしたけれど、いい提案だ、と言って早速「これから予定のない者は集まれないか?」などと旧友たちに声をかけ始めたので、幹事をまかせることにした。



    それから何度も季節が過ぎた。
    時折、元級友から便りが届く。それは封書だったり何も書いてない風景写真だったり。送られてくる国も場所もまちまちで、ああ今度はそこにいるんだな、とそれを見て実感したりしていた。
    そうやって便りが届くたびに俺は、いつか見た肩を並べた幼馴染ふたりの様子をありありと思い出しては、なんだか胸の奥がむず痒いような、でも決して心地悪くはない、そんな気分になったものだった。
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