セオドアさん -誕生-セオドアさん -誕生-
―――私は今、ヒトの時間計算で云う所の"2憶歳"であるらしい。
私が父に造られた時、この地上にはまだヒトらしい姿は存在しておらず"恐竜"と呼ばれる事となる生物が繁栄を極めていました。
今のヒトのような知能を持ち合わせない恐竜達は自我の赴くままに骨肉の争いを繰り返し、神々の存在を脅かすものではなかったにせよ、荒れていく地上を見るに耐えなかった神が審判を下すため、私のような天使が多く造られることとなりました。
この時の私はまだ造られたばかりで何の役割を持つこともなく、ただ日々天上の楽園において穏やかに過ごしていました。
私が生まれて2000年程経った頃でしょうか……
少し成長した私に役割と仕事が与えられ、先輩天使の方々のお手伝いのようなことを沢山しました。
どうやら「近々"父"が地上に居る生き物に対して審判を下す」らしいというのです。
今までにも何度か警告をしてきたらしいのですが、その程度では"父"の理想の通りには進まず、恐竜という生物に見切りを付けられた"父"が最後の審判を下すのだという…。
そしてその審判の際に私たちが"父"のお力になるべく、事前準備として色々なお仕事を教えられました。
……そして3000年位経った頃でしょうか、"父"は地上に巨大な隕石を堕としました。
地上には大変な氷河期に急変し、そこに居た殆どの生物は絶滅したと聞きました。
と言っても"聞きました"と云うことでお分かりかと思いますが、私はほぼ天上において地上や下界とは関わりが一切ない部署で書類整理などのお仕事をしていたため、それらを伝聞でしか聞くことはありませんでした。
その時のことでただ覚えているのは、とてもたくさんの書類が、後から後から、片付けても片付けても休む間もなく増え続けていたことだけです。
そして氷河期の最後に氷雪が解け、そこから息吹が目覚め始めた時、"父"は一対となるヒトをお造りになりました。
今、地上に存在しているヒトの一番最初の核となるべきものたちです。
……問題は"父"がその一部のヒトに対して特別な意思をお持ちになったことで、その後の天上は多少荒れるのですが、それはまた別のお話ですね。