花洋セックス!!!息子が鎮まるのを粛々と待って、漸く立ち上がる。気付かぬ間に、日陰は日向へ変化していたようで、花道はじんわりと汗をかいていた。
屋上を下る階段を歩みつつ、この汗は、脂汗だろうかと舌を食む。ピリリとした痛みが、フラッシャーのように、花道を現実へ引き戻してゆく。
頭を振り、両頬を叩く。
洋平とは、友達でいたい。
洋平で勃起したとしても、友達でいたいのだ。
義憤に塗れた学級委員長のように、花道は鼻息を荒くさせた。危険かもしれないが、保健室へ出向こう。洋平が心配だ。
保健室は1階にあるので、ぐるぐると階段を回る。暑い。額から滑り落ちる汗の不快感に、顔を顰めつつ、ズンズン歩く。
引き戸を滑らせる。保健室に来たのは初めてだが、本来であれば養護教諭が腰掛けているのだろう椅子が、空っぽだ。作業机の向こうにある白いカーテンの先に、洋平が眠っているのだろうか。汗を拭い、花道は足を踏み出した。
真っ白な紗を滑らせた先に、洋平の寝顔があった。真っ白い陶磁器のような肌が、人形みたいで恐ろしい。ツンと尖った鼻先から、寝息が漏れている。よく見ると大口を開けているし、口角の延長線上に、ヨダレが筋を描いている。間抜けな顔は、昔のすきっ歯の洋平を思い起こさせる。
思わず、花道は目元を緩めた。
保健室のベッドは割と大きい。洋平が身体を横たえていても、花道がその隣に腰掛ける程度のスペースは確保されている。
いびきをかいている洋平の隣に腰を下ろし、花道は彼の鼻先をつまんだ。いびきがやむ。数秒そうしていると、ブタのような醜い鳴き声と共に、洋平が飛び起きた。
酔眼朦朧としたような寝ぼけ眼で、洋平はぱちぱちと、花道を見つめる。脳内の処理が上手くできないようだ。徐々にシナプスが繋がり始めてきたのか、洋平の目が釣り上がっていく。
「てめぇ、病人になんてことすんだよ」
「すまんすまん、あんまりにも間抜けな寝顔だったもんで」
花道が嘲笑すると、洋平は慌ててヨダレを拭った。うるせぇと一言文句を投げ、照れ隠しにか、目線を窓外に滑らせる。
花道も倣って、絵画のように切り取られた窓枠の中の景色を眺める。
木々は濃い緑色をしていて、生き物の息吹が力強く感じられる。背景は真っ青だ。ハッキリとしたコントラストが描くのは、まさしく""夏""だった。
ふわりと、洋平から、再びあの香りが漂ってくる。しかし先刻のような強烈な甘みは、身を潜めている。
「花道、俺たち、このまま普通に友達でいられんのかなあ」
洋平の声が、ぽつんと落とされた。花道から顔を背けて、窓に向けて話をするものだから、声がくぐもって聞こえる。
濃緑を擦り合わせては輝く葉々が、花道の答えを急かす。
「……いられんじゃねえの?」
「そうかな」
「おう」
「でも、俺は、むりかも」
洋平の声は、今度は、真っ白な布団に落とされた。俯いた洋平の口から、ぽろぽろ、ぽろぽろと、小さな言葉が溢れてゆく。丸くて小さくて柔らかな声が、シーツに染み込んでゆく。
「さっき、くらくらしたの、多分、オメガ特有のやつなんだ。花道はアルファだから、反応しちまったんだと思う。どーしよ……おれ、正直、こわい」
初めて、洋平の弱さに触れた気がした。
洋平は賢くて、強くて、頼りになって、いつも花道の背中を押してくれる、兄貴のような存在だ。
そんな彼が、背中を丸めている。その背中が小さいことに、なんだか初めて、気付けた思いだ。
じめじめとした湿気を纏う洋平と、肩を組む。交わす盃がないのなら、身体で誓うしかない。
「なんとかするっつったろ。心配すんな。要は慣れればいいんだろ?お互い」
そう胸を張ってウインクする花道を、洋平は、軽佻浮薄な輩を蔑視するような目で、受け流した。
※
""要は慣れればいいんだろ?お互い""
この言葉を実践しようと、洋平と花道は、互いに向き合っていた。ここは洋平の部屋で、彼の母親は彼氏と旅行中で筵を外している。つまり、絶好のチャンスなのだ。
首を回す扇風機が、2人の髪の毛を交互に膨らませる。できれば羽根を独り占めしたいくらい、暑い。洋平もうだるように、襟首をパタパタと引っ張っている。
扇風機が花道に求愛行動を始めるタイミングで、洋平が口を開いた。
「で、慣れるって何すんだ?一緒に居るだけならいつもどーりだしな」
洋平の声に、花道も首を傾げる。扇風機も首を傾げ、今度は洋平に風を向けた。
「うーん、つーか最近、あん時みたいに甘い匂いしねーぞ、よーへいから」
「うっそ、まじ?」
「なおったんじゃねえのか?」
「そういえば俺も、花道見ても変な感じにならねぇ」
顔を見合わせる。同じような溜飲を抱えているみたいに、2人して似たり寄ったりの表情だ。
落ちてきた沈黙の幕を、花道が破いた。
「洋平、穴、見てぇ」
時が止まった。閑古鳥の寂しげな声が、空間を割いた気さえする。
5拍ほど置いて、挙措を失ったように、洋平は立ち上がった。
「は、はぁーーー?!?!バッッッっカおめー何言ってんだよ!!!!!無理に決まってんだろ!!!!」
「なんでだ!!」
「ぜっっっってーーーイヤ!!!見せねえかんな!!!ふざけんなバカ!!!」
烈火の如く怒る洋平に、花道は頬を掻く。まさかここまで激怒されるとは思わなかった。
「す、すまん……慣れるために必要かなと思ってだな」
書生の屁理屈じみた花道の声に、洋平の眉尻が下がる。再び畳に腰を下ろし、洋平は深呼吸をした。小さな口が空気を掻き集める。洋平の肩が、ゆっくりと上下しているのを眺めていると、少しだけ眠くなる。
瞼が10gほど重くなった辺りで、洋平が「よし」と、決意の声を上げた。
花道の瞼が、一息に軽くなる。
「なんだ?どうした」
「見せてやる」
「え?マジ?」
「そこまでしねーと、普通に接せねーかも」
「なるほど」
正直、よく分からない理屈だ。おそらく洋平も混乱している。人間の指先で目線を狂わせてしまった赤蜻蛉のようだ。
扇風機の羽が、洋平のシャツを揺らす。
─────「おお……す、すっげえ……」
花道は感激の声を上げていた。紅潮した頬が、緩みそうになるのを必死に抑える。引も切らずに訪れる笑みに、これが本能なのか、と、驚く。
恥ずかしそうに己の穴を広げながら、洋平は呻いている。
「……んな、まじまじと見るもんじゃねぇだろ……」
「つかさ、なんか金玉ちっちゃくなってねーか?」
「え?マジ?!うっそだろ」
花道の観察記録にショックを受けた洋平が、股を覗き込む。
洋平のそこは、本当に不思議だった。
無修正ビデオを見たことはあるし、女体に関する知識はある。洋平の下半身は、まるで、男体と女体を融合させたような具合だった。そして、やはり陰嚢が小さくなっている気がする。洋平とは何度か銭湯に行ったことがある。とはいえ、さすがにそうまじまじと凝視したことは無いので、確証は得られないのだが、明らかに陰嚢の位置が上がっている。
ふぐりの下には、ぱっくりとした切れ目がある。
これは、女体のそれだった。しかし、ビデオの向こう側に居るグロテスクな鮑とは、少し違う。洋平のそこは、綺麗なピンク色をしていて、本当に、ただ股に切れ込みが入っただけ、という感じだ。
洋平の股間と共に沈思黙考を続けていたが、漸く顔を上げる。花道は、洋平に一つの提案をした。
「指、入れてみてもいいか?」
「え……っ……マジ?」
「興味ねえ?フツーに」
「正直、あるんだな、これが」
笑い声まじりに、洋平は片笑む。
男子中学生なんてこんなものだ。性的な好奇心には勝てない。乗り気ではなかった洋平でさえ、白絹の肌を紅潮させている。時折やってくる扇風機の風が、悪戯っ子のように、2人を撫でた。
ぬぷり。
M字開脚をした洋平の股に頭を埋め、丈高指を差し込む。性器が邪魔なので、そちらは洋平が持ち上げている。
温かくて、ぐねぐねしている。熱湯がかけられた宇宙人みたいだ。しかし、思ったよりも奥に入らない。アダルトビデオでは、拳自体が入ってしまうのではないかというくらいガバガバと指を受け入れていた印象だ。
花道の指に、洋平の足が揺れる。
「痛いか?」
「うー……ちょっと、いてぇ」
「マジか、AVって嘘ばっかだな」
「コレが気持ちいいってのはマジで嘘だな」
洋平を見上げると、今にも嘔吐しそうな顔貌だ。
胸臆で謝りつつ、無理矢理指を挿入する。「いってー!」と叫ぶ洋平を、「あん時食らった蹴りのが痛えだろ」と、宥める。2人で背中合わせ、血が噴き出すような痛い経験は山程してきている。実のところ、全く筋の通らない誨諭なのだが、洋平はおとなしくなった。
とにかく指を動かしていると、洋平の内部の動きが変わってきた。今までもぐねぐねとしていたのだが、今度は、きゅっ、と、時折花道の指を締め付けてくる。絡み付いてくる粘液が滑りを助長するため、指の動きもスムーズだ。
「あっ……あ、っ、……な、に、……っ……やば、っ……はなみち、やべえかも……っ……」
「もしかして気持ち良くなってきた?」
「ぅ……ん、なんか、じわじわ……っ、ひっ……ぁ、」
ぐちゅぐちゅと、洋平の股から漏れてくる音が変わってくる。先程まではぬとぬとという小さな吐息しか感じられなかったが、完全なる水音になってしまった。
「すげ……マジでこういう音出んだ」
感心する花道を、洋平が睨めつける。
見れば、性器を持ち上げる手が離されている。しかし、男の象徴は、完全に上を向いていた。
よく考えると、勃起した洋平の性器なんて、見るのは初めてかもしれない。
「洋平、結構でけーんだな」
相好を崩すと、頭を叩かれた。
今度は食指も挿入してみる。2本の指を受け入れてしまった洋平の股に、驚く。さすがにキツかったのか、彼は抗議の声を上げた。
「おい!それぜってー3本入ってんだろ!」
「や、2本だぞ」
「マジ?」
恐る恐るこちらを窺う洋平に、股に飲み込まれている2本の指を見せる。赤灯地区に迷い込んで飲んだくれた翌朝のサラリーマンのように、洋平は絶望の眼差しを見せた。
「マジで入ってやがる、キモすぎだろ……」
「すげーよな、ほら、ぐちょぐちょ」
「ひっ……!おま、きゅうにっ……♡♡♡ばかっ……っ♡♡♡〜〜ンッ……!!」
ぐちゅぐちゅと指を動かすと、洋平の内部からどんどん蜜が溢れてくる。掻き出すように動かすと、ぶちゅぶちゅ下品な音が上がる。
確か、Gスポットとやらがあったな、と思い至り、花道は記憶の地図を辿った。全く整理整頓されていない、点々と置かれている島に入船しては、これではないとかぶりを振る。漸く辿り着いた知識の先に、""上壁のザラザラしたところ""というヒントを発見した。
実際に、洋平の内部を探る。
上の方で、ざらざらしているところ……。
探っていると、たしかに、ある。
感動まじりに、花道はそこを、ゆっくりと擦ってみた。
「ひっ〜〜〜♡♡♡やっ……!!!っ、……お、っ……い!、そこ、おまっ……〜〜〜!!♡♡♡アッ……っく、っ、あ〜〜!!!っ♡♡♡」
「マジでざらざらしてんのな!Gスポットって!」
「おれの身体でっ……♡♡んっ、〜〜っ!!あそぶなっ……ひっ、あっ!!!♡♡〜〜〜ぐ、っ……あ!!」
ねっとりと上壁をとんとん刺激していると、洋平の腰が跳ねる。透明だった粘液の色が、少し白濁している。
「うわ、これ、本気汁?すげー……AVって嘘じゃねえんじゃねえの」
「ばかっ!ばか……っ♡♡♡も、やめっ〜〜ん〜〜♡♡♡♡だめ、はなみち、まっ……〜〜♡♡♡やっ……っ、あ♡♡」
一旦指を引き抜いて、洋平の中に頭を入れていた2本の指を見せびらかす。その指には、いやらしく白濁した本気汁がまとわりついている。わざと、洋平の眼前で糸を引くように、食指と丈高指を付けたり離したりしていると、そっぽを向かれた。
「ほら、これ、よーへーの本気汁。すっげーエロくね?」
「うっせーばかマジで信じらんねぇ」
「んー?そんな生意気な口聞いていいのかね?」
洋平を押し倒し、再び指を挿し入れる。ぬとぬととした粘膜に再び包まれ、指が歓喜の声を上げた。
先刻探り当てたGスポットを素早く擦り上げる。洋平の背がガクンとしなり、甲高い声が天井を跳ね返る。
「〜〜〜っ♡♡♡♡♡♡♡やっ〜〜〜!!!!♡♡♡♡♡まっ、てっ♡♡♡らめっ、はなみち、まっ〜〜〜♡♡♡♡」
ぶちゅぶちゅ、ぐちゅぐちゅという音が、扇風機の音を掻き消さんばかりに鳴り響く。洋平の喘ぎ声は思いの外高くて、その声に煽られた花道の性器もパンパンに腫れ上がっている。
乱暴に指を出し入れしていると、洋平の膣が、ぎゅーっと締まった。締め上げられる指が頭を掴まれ、動きの勢いが落ちる。同時に、洋平の腰が、びくんと大きく跳ね上がった。
「いっ〜〜〜!!!♡♡♡♡♡♡っ……はっ……はっ……ぁ………っ……〜〜〜」
どうやら絶頂に達したようだ。尚も身体を跳ねさせる洋平に、花道は、性器を押し付ける。ズボン越しではあるものの、これは、明らかなセックスアピールだった。
虚だった洋平の目が、炯眼化する。
「ま、……はなみち、……それは、やべえって……っ」
「う〜、いれてぇ……」
「だって、それは……友達じゃなくなっちまうだろ」
「ようへい〜……だめか?」
「う、……」
時折、洋平のことが心配になる。彼は押しに弱すぎるのだ。
弱みにつけ込んで挿入に至っている花道が言えることではないが。
ぬぷり、ぬぷり。
洋平の膣が、花道の性器を包み込んでゆく。温かい。とにかく、温かい。気持ちいい。洋平は気持ちいいのだろうか。ぐねぐねとした宇宙人みたいで得体の知れなかった洋平の内部が、愛しくて仕方ない。花道を離すまいと必死に絡み付いてくる肉襞の全てを、愛でたい。
ず、ず、と腰を動かすと、洋平の腰も浮き上がる。気持ちいいところを自ら探って擦り当てているようなその仕草に、花道は鼻血を吹き出しそうになった。洋平って、こんなにエロかったっけ?
まさか、洋平とこんなことをする未来が来ようなんて想像しても居なかった。不思議な心地だ。
花道の下で顔をとろとろに蕩けさせている洋平を眺めつつ、花道は快感を貪った。
仰臥している洋平を持ち上げ、対面座位の姿勢になる。自重で深い所にまで刺さったのか、洋平の声が喉の奥から弾き出た。
「あっ〜〜!っ、ひ、っ……おく、こわっ……い、……っ、ひぐっ……ゥっ……」
構わず、とんとんと突き上げる。軽いなあ、なんて思いながら、洋平の感じきっている顔を堪能した。眉尻は情けなく垂れ下がり、目元なんてぐずぐずに溶けている。鼻水は出ているし涎もだらだらだ。洋平を慕っている輩がコレをみたら卒倒するのではなかろうか、と苦笑する。
「イヤだイヤだって、腰振ってんの洋平だぞ」
「ちがっ……っうっ……〜〜♡♡♡」
「じゃ、オレ動かねーから」
そう言って、花道は律動を止めた。正直、洋平の腰を引っ掴んで突き上げたいが、ぐっと堪える。
攻防戦ならぬ防防戦が幕を開けたものの、数秒で決着はついた。我慢ができなかったのか、洋平が自ら、腰をくねらせ始めたのだ。
「ほら、腰動いちゃってんぞ♡よーへい♡」
「ッ………も、……がまんできな……かってに、ッ〜〜♡♡♡こし、うごく……っ♡♡きもち……っ♡♡♡きもちいっ♡♡♡っ〜〜……んっ♡」
「うんうん、きもちーな、俺もきもちー……」
花道も、洋平の腰を掴み、ばちゅんばちゅんと突き上げる。
洋平の喉が仰け反り、彼のシャツが、花道の鼻をくすぐる。石鹸のような香りだ。洋平って、野郎のくせにいい匂いがするんだよなあ。
その香りをかき消すように、扇風機の埃っぽい風が、花道の鼻腔を通り抜けた。