ジェラート・デイ「…スター、バスター・キエラ」
野太い声でぼやけていた意識が輪郭を取り戻す。
「しつれ…いや、すみません、教授」
ぼんやりと、講義を聞く。
灼熱の様な炎天下と違い、クーラーの聴いた涼しい講義室。
…あの時は、暑い暑いと夜に涼を求めり色々工夫をして。何やら怪しい店で物珍しいからと初めてのアイスキャンディを買って、舌で舐めたそれが冷たいのなんの。
ああ、懐かしい。
思い出に浸りながら露店で買ったジェラートを口にする。
体内を満たす冷たい感覚も、すっかり慣れてしまった。
いや、正確には慣れていた、と言った方が良いのだろうか。
庭園の樹々が揺れ、生ぬるい風を運んでくる。
…あの日を、思い出を運んでくる。
7月4日。
「誕生日なんて、年を数えるだけの日」そんな風に思っていたはずなのに、その日は何故かケーキを買って、紅茶を淹れていた。
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