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    かずや とものり

    @wail0wailz

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    ゴーストフィッシュ 0.5話 戦闘シーンカフェのテラス席に少女が一人。
    パラソルのついているテーブルでカフェラテを飲んでいる。

    それを暗闇から見計らっている犬のような影。

    少女が、一口飲んだことで形の歪んだラテアートをテーブルに戻したのと同時に。
    化物が少女にむかって飛びかかる。

    化物は狛犬のような顔、四肢は獅子舞のような黒い人のような形、鯱のような尾鰭。
    その化物の口からは鋭い牙が生え、巻物を噛むように刀を咥えている。

    そんな異形が突然現れた事に全く反応できないのか、少女は指先すらも動かせない。
    異形の化物の刀が少女の首をかき切ろうとした瞬間。

    カフェの隣のビルから人影が落ちてくる。
    その正体は、大きなトランクを持つ成人男性。

    トランクの重さを使って落下スピードを上げる。

    ダンッと大きな音が立って、化物をパラソルとテーブルごとへし折った。

    陶器のように粉々になった化物とパラソルの破片が、舞い散る。
    驚く少女の視線と男性の視線が交差する。
    時間が止まったかのような感覚。

    それは一瞬の事で、男は半分になったテーブルを足で退ける。
    「準備が出来た。ここは危ないから逃げなさい」
    「え…あ…」
    少女の手を引っ張り立ち上がらせ、急いで逃げるよう背中を押す。
    「聞こえるか綾斗?ゴーストフィッシュ(幽霊)発見。戦闘に入る」
    『オーケィ、明人』
    男性:明人の耳についた端末から明るい青年の声が聞こえる。

    明人と呼ばれた男性は持っていたトランクを蹴り上げる。
    トランクは持ち手が変形すると同時に内部から歯車のような車輪が突出し、巨大ハンマーのような形となる。

    『マップ読み込み中。ゴーストフィッシュは一方向より進撃している、南方向に避難推奨!』
    「あちら側へと走りなさい」
    明人はそれだけ少女に伝えると変形したトランクを軽々と抱えて跳んでいった。

    少女は言われるがままに走る。
    だが明人が捌ききれなかったのか、複数の化物は少女を追いかけてきた。
    「わ」
    少女がバランスを崩してよろけると化物たちは一気に距離を縮めてきた。

    「女の子一人を集中攻撃って外道過ぎない?」
    ビルの屋上で待機していた青年二人が飛び下り、少女と化物の間に降り立つ。
    「まずはご挨拶」
    一人の青年が、札を数枚取り出しそれを指先でぐしゃりと折り曲げると札が苦無へと変化する。袖にしまわれていたベルトのような黒い帯といつの間にか繋ぎ合わされていた苦無を空中に投げると、無規則に壁に刺さり頑丈な門のようになる。
    「はい、此処から先は進ませませーん。波音、こっからよろしく!」

    両手に長さの違う日本刀を持った青年が少女に一声かけて走り出す。
    「さあ、奥へ走って!」
    タンッと軽い足取りで黒い帯を足場にして空中へ舞い上がる。

    門を飛び越え、空中で無防備になっている化物を次々と切り落としていく。
    「おー。さすが波音。…ととっ!」
    感心して空中を眺めていたもう一人の青年:萩にも容赦なく噛みつこうとしてきた化物だったが、萩は軽い足取りで回避する。
    バク転しながら服から札を数枚苦無へと変換させ、足技で化物を壁へと蹴り飛ばし苦無と投げつける。
    「補助要員だけれど戦闘もちょっとできますよ、ってね!」

    「夢亜さん、日陰までもうちょっと!」
    波音が無線に手を当てながら声を出す。

    「はぁっ、けほ。…お気遣い、ありがとうございます」
    走り慣れていないのか咽せながら返答をする。
    走っていた少女の耳にも、無線。

    少女が日陰へと走り込む。

    そこが安寧の地かと思われたが、待ち受けていたのは暗闇に光る幾つもの化物の目。

    少女の顔は絶望に染まるかと思いきや、安堵の表情。

    「一か所に纏っていただき有難うございます」

    少女の足元から真っ黒な影があふれる。
    「光の無い所は、あぶないですよ」
    少女が声を出すと同時に、少女の喉からは違った別の女性の声も出る。
    『いいぜ、殺してやるよ』
    その声と同時に、少女の足元から黒い影が四方に飛び散っていく。

    それは尋常に無い速度で路地の壁、足元、全てを覆い。
    真っ黒な影は、化物を全て飲み込んだ。

    ……。

    路地裏に広がった影が、波がひくかのように小さくなっていき夢亜と呼ばれる少女の足元に戻っていくと、静寂が訪れる。
    「ヒュー。お疲れ様!」
    先ほどまで戦っていた全員の耳についている、無線端末から拍手と嬉しそうな綾斗の声が聞こえる。

    路地へと4人は集まり、お互いを労う。
    「もう少し俺の術が広範囲になれば効率よくなるんだけれどな」
    「萩はよくやってる」
    「夢亜もお疲れ様。良い演技だったよ」
    日陰から出てきた夢亜へと、明人が労いの声をかける。
    「わ、私の足で追いつかれちゃうかと思いました……皆さんフォロー有難うございました」
    「いーの、いーの」
    「とても良い動きだったぞ」
    『さぁて、今日の晩御飯は綾斗特製ラザニアでぇす!』
    「わーい」
    そう彼ら5人。夢亜・明人・萩・波音・綾斗は仲間。
    死にぞこない達のゴーストフィッシュ(幽霊)狩り。

    これは少女と青年たちが自分を取り戻す物語である。
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