「ニュートン力学すら知らないとは言わさないぞ」
「それぐらいは知っているさ!リンゴだろ?」
ヘルムートの詰問にテセウスは叫んだ。子供でも知っている事を持ち出されて、馬鹿にするなと思う。ヘルムートが教授からも一目を置かれる程の、物理学の才があるとは言えだ。
「ほう、ならそのリンゴが何なのか説明してもらおうか」
そんなテセウスを認めてヘルムートは、腕組みをすると顎を掬うようにして続きを促す。それにぐぅと息を飲んで、何故言わなければならないんだと思いつつも、仕方無しにテセウスは説明を始めた。
「リンゴが落ちるのに、ニュートンはある日気付いた。リンゴが落ちるのは……」
「落ちるのは?」
「地球に……重力があるからで……」
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