【6/30さめふる新刊②Sample】村雨さんちの礼二君村雨さんちの礼二くん。この頃少し変よ。どうしたのかな。
「というわけで今週の土曜日の日中に悩みを聞いてあげられない?」
「——は?」
母親の唐突な発言にオレは素っ頓狂な声を上げることしかできなかった。
実はオレの前世は銀行の違法地下賭博で金を稼ぐムキムキマッチョのギャンブラー兼投資家だったんだ。なんて聞いたら皆が口を揃えて言うだろう。
「そういう年頃なのね」と。
オレだって他人からそんなこと言われたら口にしないまでもそう思う。もし本気で言っているなら然るべき医療機関を受診したほうが良いとも思うはずだ。
けれどこれは事実でオレの頭は至極真っ当だ。
オレには前世の記憶がある。
『獅子神敬一』はお世辞にも恵まれた環境の生まれではなかった。自分のことをゴミとしか思わない両親。満足に衣食住を与えられない汚らしい子どもを煙たがるか憐憫の目を向ける周囲。そこから藻掻き抗い、マシな見た目とまとまった金が入るようになれば掌を返したようにすり寄るハイエナのような奴ら。
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