猫に首輪は着けられない 猫が居着くようになった。
大きな身体に柔らかい毛並み。
一部の隙もない直毛に見えてその実、癖があるのを知っている。
ふんわりと波打つ紫色の毛並みは朝一の毛づくろい前にしか見られない。
それを知っているのは一体どれだけいるのだろう幾度も思った。
猫は俺の家が定住地ではない。
気まぐれにやって来て気まぐれに帰る。
飯を食いに来てるかと思えば飯も食わず、俺の顔だけ見て帰る時もある。
猫は別に住むところがあり、俺はその場所を知らない。一度どこに住んでいるのか聞いたところ、赤い目を細めてはぐらかされてしまった。
聞くなという合図がわからないほど馬鹿ではないと自負しているのでそれ以来気にしないことにした。
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